健康食品の広告担当者が知っておきたい薬機法の9つのポイント
医薬品医療機器等法(薬機法)違反の容疑で健康食品販売業者が逮捕されたというニュースを耳にすることがあります。健康食品の広告は薬機法をはじめとする関連法規の順守が求められ、細心の注意が必要です。健康食品を取り扱う企業の広告担当者が知っておきたい薬機法の9つのポイントを解説します。
健康食品は下記の図に示すように、保健機能食品制度に基づく保健機能食品とそれ以外の健康食品に分けられます。健康食品のうち保健機能食品以外のものについては、保健機能食品と区別するために、いわゆる「健康食品」と呼ばれることもあります。今回はいわゆる「健康食品」にあたる健康食品と薬機法についてフォーカスして解説しています。
健康食品の広告に規制がある背景とは
健康食品で「高血圧が改善」「風邪を予防」など、医薬品的な効能効果を表示することは薬機法で禁止されています。
その理由は何でしょうか。「糖尿病を改善」と表示したサプリメントの広告を例に挙げて考えてみましょう。
糖尿病患者は医療機関に通院し、医師が処方した薬を服用したり、食事制限を行ったりします。
しかし、サプリメントの広告を鵜呑みにすると、自分の判断で薬の服用を中止したり、食事制限をやめたりする恐れがあります。そうなると、医療を受ける機会を失わせ、病状を悪化させてしまいます。このため、行き過ぎた広告を禁止しているのです。
ポイント1 薬機法は「何人も」に対しても適用
薬機法の規制は「何人」に対しても適用されます。販売業者だけでなく、原料メーカー、マスコミ、広告代理店なども対象になります。
ポイント2 無承認医薬品の広告の禁止
薬機法による健康食品の広告の取り締まりは、主に「承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止」(第68条)に基づいて行われます。
国の承認を受けずに医薬品的な効能効果をうたった場合、健康食品であっても無承認医薬品の広告とみなされてしまいます。
第68条に違反すると、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます。
ポイント3 何が広告にあたるの?広告の3要件とは?
広告の違法性は(1)広告に該当するか、(2)広告内容に医薬品的な要素があるか――の2段階で判断。どちらも満たす場合、薬機法違反になります。
第1段階の「広告に該当するか」については、薬機法の広告3要件を満たすかどうかで判断されます。
広告3要件とは次の3点。
顧客を誘引する意図が明確であること。
特定の商品名が明らかにされていること。
一般人が認知できる状態であること。
これらの3要件をすべて満たす場合は、広告に該当します。
ライターが執筆した記事であっても、3要件を満たせば広告に該当します。一方、学術会議での発表は3要件を満たさず、広告に該当しません。
ポイント4 医薬品成分の混入
次に、違法性を判断する第2段階の「広告内容に医薬品的な要素があるか」について見ていきましょう。
まず、健康食品に医薬品成分が混入している場合は、医薬品とみなされます。
食薬区分の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に記載されている成分は、食品への使用が禁止されています。
ポイント5 医薬品的な効能効果とは?
健康食品であっても、医薬品的な効能効果を表示した場合には医薬品とみなされます。では、医薬品的な効能効果とはどのようなものでしょうか。
第1に、疾病の治療・予防を目的としたもの。例えば、「動脈硬化の人に」「高血圧の方に」「糖尿病の改善に」などです。
第2に、身体の組織機能の増強・増進を目的としたもの。例えば、「疲労回復」「体力増強」「食欲増進」「アンチエイジング」などがあります。
第3に、直接的な表現でなく、医薬品的な効能効果を暗示した場合も医薬品とみなされます。例えば、商品名に「漢方秘法」「延命〇〇」などの言葉を用いた場合です。「薬草を独自の製造法によって調製」という製法の説明も暗示に該当。また、含有成分の効能効果の説明も暗示したことになります。
このほか、医師・学者の談話、学説、経験談を用いた効能効果に関する表現も暗示に該当します。
事業者の責任で、科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出された食品が機能性表示食品です。機能性表示食品は、「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、特定の保健の目的が期待できる(健康の維持及び増進に役立つ)という食品の機能性を表示することができます。特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品以外の食品に、食品の持つ効果や機能を表示することはできません(食品表示基準第9条)
ポイント6 医薬品的な形状
薬機法では原則、形状のみによって医薬品に該当するかどうかを判断しません。
ただし、アンプル形状や噴射式スプレーなど、通常の食品では見られない形状のものは医薬品とみなされます。
ポイント7 用法用量
「食前に」「食後に」といった服用時期や服用間隔の記載は、医薬品的な用法用量に当たります。「成人1日3錠」という服用量の記載も同様です。
ただし、健康食品の連用によって健康被害が発生する危険性がある場合などでは、摂取時期や間隔の目安を表示することがあります。また、「1日摂取目安量」の記載は問題ありません。
ポイント8 BtoBも対象
薬機法の規制は消費者への販売だけでなく、企業間取引(BtoB)も対象。このため、健康食品の原料の広告であっても、医薬的な効能効果をうたうと薬機法に抵触します。
この点は業界内で間違った解釈が多く、注意が必要です。
ポイント9 措置命令と課徴金
薬機法の改正により、2021年8月1日から措置命令と課徴金の制度が導入されました。
措置命令は、虚偽・誇大広告と無承認医薬品の広告に対して適用。措置命令の内容は、違法な広告の中止、法違反したことを関係者や消費者へ周知、再発防止策の構築など。
課徴金は虚偽・誇大広告に対して科すことが可能とされています。
健康食品で行き過ぎた広告を行うと薬機法違反に問われ、懲役または罰金が科せられます。今後は措置命令が出されるケースも出てくるでしょう。
そうした事態を未然に防ぐために、健康食品の広告担当者は薬機法を十分に理解し、適正な広告を心がけましょう。