オウンドメディアはオワコンか?令和のオウンドメディア戦略
2019年5月1日に平成から令和に変わり、オウンドメディアの閉鎖も相次ぎました。Supership株式会社が運営していた「nanapi」、株式会社ぐるなびが運営していた「みんなのごはん」、帝人株式会社が運営していた「フミナーズ」などオウンドメディア黎明期から運営されているメディアが幕を閉じています。
2014年頃の過渡期に、私自身もオウンドメディアを担当していたので、コストカットやデジタル化の流れの中で、守ろうとすることが正しいのか否かの答えを持ち合わせていなかったように思います。過渡期の中にオウンドメディアをたまたま20代の若者が責任者として抱えていて、上手くコントロールできなかったような思い出があります。
2013年から2017年くらいのオウンドメディアが流行した時期を振り返ると、(1)PV獲得などの定量的な数字を目的に運営を開始した企業と(2)競合企業がやっているから運営を開始した企業の2パターンも見受けられたように思います。
(1)の場合は、PV数などの定量的な数字を追いかけ、低コストで大量に記事を量産した結果、YMYL(Your Money or Your Life)というグーグルが検索結果の表示順位を決めるアルゴリズムが登場し、運営に大きな影響をもたらしたと考えられます。 (2)の場合は、とても牧歌的に運営を開始し、時は流れ、企業の経営状況によってコスト的に苦しくなってくると、コストカットの対象となるケースもあったでしょう。オウンドメディアを始めた背景がふわっとしているため、企業は費用対効果の観点から、オウンドメディアを続ける意味を見出せなくなり閉鎖する流れも考えられます。
令和に入り、閉鎖が相次いだオウンドメディアですが、新規に運営を開始する企業も存在します。これからのオウンドメディアに求められることは何か、オウンドメディアの役割は何か、オウンドメディアの課題は何か、そして解決策はあるのかを考えていきたいと思います。
令和になってオウンドメディアは変わったのか?
オウンドメディアとは、2011年から2014年頃にブームとなり、多くの企業で取り組まれ始めました。 ちょうど10年くらい前は、「デジタルで何かできそうだ!」「メディア×デジタルで何かできそう!」という牧歌的な雰囲気(ぼんやりしたイメージ)な雰囲気が漂っていたように感じます。
2016年には有名キュレーションサイトにニセ情報が掲載されているとされ、炎上したことは衝撃的でした。当時は、同じような形態で運営をしているサイトは多くあったように感じます。運営会社がPVのためにサイトを運営していたり、受託企業が安請負していたりすれば、起きやすい現象でした。新たな価値創造をしようという意識があれば運営体制も予算も違うでしょう。
その後、コンテンツの品質を向上させることを目的に、2017年12月にGoogle は日本語検索におけるページの評価方法をアップデートし、2019年以降はおおよそ3〜4ヶ月に1回の頻度でYMYLアップデートが起こっています。
YMYL…Your Money or Your Life の頭文字を取った略称で、お金や健康などのジャンルを示すGoogleの検索品質評価ガイドラインに登場する言葉です。お金や健康などに関する情報は、人の生活や人生に大きく影響するジャンルのため、Googleはコンテンツの評価基準を厳格にし、より検索結果の品質を高めようとしています。
2020年には新型コロナ感染症が流行し、「社内外のコミュニケーションをデジタル化するために、オウンドメディアがオススメです!」という文脈をよく拝見するようになりました。 継続的にメディアを運営していく必要があるため、コロナだからデジタル化すべきという動機だけで始めない方がいいでしょう。
一つひとつのコンテンツを作るには、体力とリソースを使うことになりますます。さらに令和に入ってから、コロナを経験した人々は、よりリアルかつクオリティの高い有益な情報を求められるようになっています。ある意味、見通しの立たない将来に対して余裕がなくなっていること
令和時代のオウンドメディアの役割
もともとオウンドメディアやメディアには、埋もれがちな価値観や活動を伝える役割がありました。そういうことに価値観があるんだ!という気づきを与えたり、記事がきっかけで良い影響がをもたらしたりすることが起こります
コロナ禍で人々がよりリアルな情報を求めるようになり、オウンドメディアに求められることに変化もあったのではないでしょうか。コロナの影響で、見通しの立たない将来に対して余裕がなくなり、例えば、地域活性化、教育格差などは社会課題と捉えていた感覚から、自分たちの課題と近い捉え方をするようになっているように思います。「健康」「将来」「収入」「働き方」「地球の環境」「子どもの教育」などリアルな課題と感じ、リアルな情報を欲するようになっているように見受けられます。 オウンドメディアの役割は、社会的なこと、個人的なことを発信し、共感を呼ぶことにあります。
定量的な評価を軸にしてしまうと、身動きが取れないことも、想像力に広がりがなくなることも起きるでしょう。 5〜6年前は、SNS全盛期で、SNSに投稿すればシェアされた時代で、数字的な結果を出しやすかったのですが、今はシェア疲れをも起こしています。シェアする動機とアクションが紐づかない。誰かに教えたり、誰かと共有したりするのではなく、自分の価値観や社会の動きを見つめているような感じがします。
オウンドメディアの評価を、目に見える数字として語ることは難しくなります。KPIという指標自体を用意することは企業で運営する限りは重要ですが、オウンドメディアをやっていくことの意義をブレないものにしていくことが大切です。
オウンドメディアはどんなところに使われている?オウンドの活用目的
成功事例となっているオウンドメディアはどのように活用されているか紹介します。
集客に活用
リスティング広告だけでは、予算によって、集客できる範囲が決まってしまいます。集客のボリュームが欲しい場合は、どうしてもコンテンツSEOを取り入れる必要があります。 例えば、オウンドメディアを運営し、自社サービスやプロダクトに関連するノウハウや最新情報などの有益な情報を公開し、SEOの評価を高めることができます。オウンドメディアのユーザーに対して、有益な情報を提供することで、信頼を高めることもできます。
採用活動(リクルーティング)に活用
オウンドメディアリクルーティングとは、オウンドメディアを活用して自社の魅力を発信し、自社に合った人材を採用することをさします カルチャーが合わない人材を採用してしまうと早期離職のリスクが高まるということから、カルチャーフィットを採用に取り入れられるようになりました。そのため、企業のビジョンや社風を自由な形式で伝えたいという企業ニーズが生まれ、社員のインタビューや定期的なイベントレポート、社内風景など発信するオウンドメディアで伝えられるようになりました。
ブランディングに活用
社内のミッションやビジションなどの想いがしっかり伝わることで何かが変わる可能性はあります。その何かまでを説明することは非常に難しいですが、起きたハッピーな出来事を拾って、何かにつなげていくことが大事です。ハッピーな出来事も忙殺されて、スルーしてしまったら意味がないので、ハッピーなアクションを拾える体制にしておくと良いでしょう。
コンテンツとして再利用
オウンドメディアに蓄積され、紙媒体に耐えうるコンテンツは、紙媒体として再活用をすることができるでしょう。
令和のオウンドメディアの課題と解決策
令和に入り、大手企業が運営していたオウンドメディアも閉鎖が相次ぎました。個人の情報発信の障壁も下がり、情報が溢れている時代に、オウンドメディアをやる意味はあるのか?オウンドメディアはオワコンなのではないか?という悲観的な考えになりやすい状況でもあります。
特に、オウンドメディアは運営にコストがかかり、関わる人のみんなのリソースも継続的にかかります。オウンドメディアを継続するだけの体力と、体力を支えるモチベーションが必要です。
そのモチベーションはどこからくるかというと、文化的な貢献だったり、社会的な貢献だったり、何か新しい価値創造への意識だったりします。社会のために、できることを考えて、発信することが肝要となります。
KPIの立て方が難しい
何かしら指標を見える化して目標を持って取り組むことが企業の中では大切なことです。PVやCVだけに捉われずに、適切なKPIを作りましょう。そして、フェーズに合わせて、しっくりくるKPIを探してみることが大切です。
例えば、立ち上げ当初は記事数や取材依頼数でもいいかもしれません。
PV、コンバージョンが増えない
PV数はSEOによるところも大きいのは事実ですが、SEO対策だけにフォーカスして記事を書いてしまうとつまらないコンテンツになりがちです。PV数が取れたとしてもその先に発展しない可能性があります。 お客様や生活者がどのような情報を求めているのかしっかり考えた上で、記事を企画し、必要によってはSEO対策するようなスタンスが良いでしょう。
方向性が定まらない
ターゲットやオウンドメディアの方向性が決まらないと、なかなかコンテンツの企画もクオリティも上げていきにくい部分はあります。誰のために、何をするのかという明確な方向性は、関係者を束ねるためにも必要でしょう。何が良くて、何が良くないのかを判断する基準にもなるので、しっかり決めておくようにしましょう。
社内で理解を得ることが難しい
オウンドメディアには、多くの人が関わります。他部署との関係を作ること、成果を見える化していくようなアクションをしておくといいでしょう。取材して欲しいとか、掲載して欲しいとか、そういった声が出てくることが一番のKPIかもしれません。
既存メディアとの連携ができない
他メディアにもリンクを自動的に配置するなども行えるので、連携し、相互に誘導することは効率的です。また同じような記事を重複して作成することも防ぐことができます。
メディア横断した活用が難しい
SNSの運用、コーポレートの運用など分業化されている場合は、横断した活用自体が思いつかない可能性もあります。自分の所属している部署だけ対応することに考えが留まってしまいがちなので、大きな視点でどのような活用が適切なのか時間をかけて考えていくといいでしょう。