メーカーでも広告代理店でもない受託側、ビジョンの設定と差別化

メーカーでも広告代理店でもない受託側、ビジョンの設定と差別化

現在は、FLOURISHはマーケティング(ビジネス)・テクノロジー・クリエイティブを横断するようにプロジェクトを対応していますが、オペレーションを求められることも多くあります。発想力が必要ではあるプロジェクトでもそのスキルよりも、オペレーションだけが評価されるケースもあります。

それは受託というと“作業の下請け”というイメージが強いことが原因ではないかと感じることもあります。例えば、デザイナーの仕事は「制作」と呼ばれたりします。それは、企画が決まってから制作する役割という意識の所以でしょう。

ブランディング、イノベーションといったところで価値を提供するにはどうすればいいのだろうか。何かできないかと良き相談相手である坂田さんに相談し差別化に着手しました。 まだ、道のりは長いですが、今回はビジョンの策定についてお話します。

目に見える悩みと本質的な課題

「時代に合ってない気がしています。サイトでもリニューアルした方がいいですか?」と相談をぶつけてみました。

目に前の悩みは、問い合わせや埋もれ感で、あまり興味を持っていただけていないこと。何か変えないといけないから、Webサイトのリニューアルをしたいという気持ちでした。

坂田さんの目から見るとお品書き(ソリューション:提供できる支援エリア)は揃ってきているのに、良さが伝わらないのではないかという話になりました。

ミッションはあるものの、それに紐づいた回答(ビジョン:将来的に実現させたいことの姿)が伴っていないから、どんな会社かわからないで終わってしまうのではないかという仮説が浮上しました。

そこで、会社の本質を伝わるようにメッセージとしてビジョンステートメントを策定することにしました。

コアバリューを組み込む

今あるミッションからビジョンを考える

FLOURISHは設立当初は、「経営✖︎クリエイティブで社会を豊かに」でしたが、テクノロジーを組み合わせた取り組みの増加やサステナビリティが求められる社会の変化に伴って、2022年2月から「この社会に、正解より最適解を。」を変更しました。

まずは今あるミッション「この社会に、正解より最適解を。」から、課題の再定義を行い、ビジョンステートメントを検討しました。

例えば、社会や企業が抱える課題といえば、キーポイントになってくるのは、人口減少、SNSの衰退(すると思う)、データ活用、Cookieレス、エシカル、AIあたりでしょうか。

生成AIとAIをどうやって活用していくのか

まず、最初に話題としたのは生成AI。Generative AI(ジェネレーティブAI)とも呼ばれ、さまざまなコンテンツを生成できるAIのことです。

坂田:どの会社も生成AIと言ってますよね、生成AIに対してアプローチはどうですか。

中込:私は生成AIに対してポジティブには受け止めてないんですよね。

坂田:でも、記事では少し書いてたじゃないですか。

中込:実際に使ってみたのですが、普通に使わないで作った方が早い気がします。

坂田:ただ、大手企業では一部の制作業務ですでに生成AIを使っていますよね。

中込:発注側は制作業務にAIを使うか、興味持ってますかね?

坂田:発注側はAIに興味は持ってますが、期待通り(少し超える)ものであれば、AIで生成されたものか、人の手で作られたものかは関係ないかと思います。ただし、AIの著作権問題は確認しておかないとリスクを抱えますよね。

中込:それはそうですよね。AI生成物の著作権侵害では論点になる「依拠性」と「類似性」も見解にはバラつきがありますし、まだ法律や規制は定まっていない曖昧な状況ではありますよね。各AIサービスの規約を確認して、倫理的に問題ないかを判断していくことは必要だと思います。

文章やイラストを作成する際に、生成AIを使うことはクリエイティブと言えるか。プロンプトには著作権があるかのか。改めて、クリエイティブと言えるラインはどこなのか考える必要はあります。

ディレクションをしていると、突然とwebライターの文章のテイストが変わったりするので、生成AIを使っているのだろうなぁと分かるものです(人によるとは思いますが使用を報告されたことはありません)。現状、弊社では(生成AIの使い方次第なのかもしれないですが)、構成に違和感があり、全部文章がなくなるくらい赤入れになることも発生しています。

次にAIのクリエイティブへの活用に関して、テーマにしました。

坂田:予算が限られた中で、一定の品質を保った形で制作を続けることって、なかなか難しいとおっしゃってませんでしたっけ?

中込:確かにそういうこともありました。修正したり、再発注したりのリスクは当然抱えています。

坂田:そういう時にAIを活用したモックとかはいい気がします。

中込:確かに。上手く活用できれば、工数を抑えられそうですね。

坂田:アイディアの具現化の簡易化として活用できます。

中込:効率性を求めるものへは適用できますね。訴求すると「より安くより早く」になりますよね。スモールスタートさせるべきプロジェクトや、クライアントとのズレの解消にもいいと思いました。

クリエイティブでのAI活用は、クリエイティブな業務で使うツールにはAIが搭載されています。これらのAIに関しては、クリエイターが活用して、より効率的に早く制作したり、アイディアの簡易的に具現化し、発注企業とのズレを減らしたりできる利点があります。

中込:そういえば打ち合わせ前にレシピ動画を作るために、近くの小道具レンタルのお店に行ってきました。クリエイティブ女子がたくさんいました。

坂田:あまり気に留めてみてなかったですが、レシピ動画の作成は結構盛んなんですね。

中込:そうみたいです。レシピそのものの動画さえあれば、小道具とかは生成AIとかで上手いことできそうですよね。撮影のたびに、レンタルや買い出しをしなければクオリティは上がらないのですが、ある程度はテクノロジーの活用によって効率的にクオリティを上げられる可能性はあるような…!

坂田:素材をうまく加工するという使い方はいいですよね。この前、WPP(世界最大の広告代理店グループ)のCEOも生成AIはクリエイティブを補完するものになるだろうというようなコメントをしてました。

中込:私の言っていることと一致してません?!

坂田:一致してる!

クリエイティブな作品をより効率的に制作できるようになると思いますが、生成AIやAIによってクリエイティブな仕事は奪われるものではないと考えています。

弊社はAIを含めたテクノロジーをクリエイティブに活用することに前向きですが、人間が「デザイン」することを辞めてしまうような使い方は行わない方針です。この「デザイン」ということに対しても明確に定義していくことは必要です。

例えば、デザイン=制作と捉えるのか、企画の上流となるコンセプト開発をするところからデザインに捉えるのか。これはプロジェクトの関係者間の意識に大きく左右される部分でありますが、企画の上流となるコンセプト開発をすることはとても重要なフェーズであり、その部分は大切にしていきたいと考えています。

データの活用はレポーティングで終わりがち?

10数年前、CRMは一大ブームでした。当時は顧客情報を一元管理するという点が注目されてましたが、昨今の人口減少の中でLTVを伸ばすには、一元管理された顧客情報をに活用していくか?ということが重要になると感じています。Cookieレスのマーケティングが求められるようになり、1stParty Dataを獲得し、その取り扱いを工夫していく必要があります。

中込:データの活用はやりたいのですよね。例えば、ダイナミックプライシングとか。

坂田:ダイナミックプライシングもすでに航空会社、旅行会社、オンラインサイトなどどこもやっています。B2Bにおいてもデータ活用によって、顧客ごとの価格で見積金額を作成するようなプロジェクトもやってました。 とはいえ、データ分析し、見積金額を算出するという活用までできているケースはそこまで多くはないと思います。どちらかというと、データ分析を個別で行い、結果データを“見える化“して終わるケースが多いですよ。

中込:それ大事じゃないですか?人間の判断を拡張することがデータ活用のメリットだと思ってましたが、実用ではアクションまでつなげるというのが大事ですね。

坂田:データを分析し、アクションつなげるという高度化は、ますます必要になってくると思っています。一方でレポートが全く不要となるとは思ってませんが、リクエストごとに個別にマニュアル作業で対応するのではなく、ダッシュボードなどを活用し、いつでも、好きな視点でデータを見ることができる環境作りも合わせて検討したほうが良いかもしれません。

データ活用も含めてデジタル化しても結局、人の作業が増えてしまっては、あまり効果的な導入にはなりません。例えば、レポーティングで止まってしまえば、レポートを読み取ってアクションするのは人間になってしまいます。ここでもう一歩進んで、アクションを自動化することをビジョンに盛り込みました。

オペレーションが多いマーケティング業務…

マーケティングは、質より量、長期や中期より短期という方向性のアプローチが主体になってしまうと、とっても非効率でタスクばかり増えます。ですが、それを変えて本来の理想に持っていくのも、そんな簡単ではないのは事実。

坂田:マーケティングの効率化はどう受け取られると思いますか。タスクに埋もれやすいという課題を解消するニーズはないのでしょうか。

中込:それは、ニーズはあると思います。優秀なマーケターがタスクマンにならないですみます。私はすごい賛成です!現状維持を望むスタンスの場合、「効率化」はネガティブに思われてしまうかもしれませんが。

坂田:課題に対してアプローチして解決することで、また新しい課題は生まれるの繰り返しですよね。どこら辺のプロセスを自動化できそうですか。

中込:インハウスで処理していて時間がかかっている部分に関しては課題があると思います。特にオンラインセミナーは自動化できるほど良いとは思いました。ただ、内製で運用しているか、評価制度に効率化が対象になっているかに寄りますよね、その気運は企業差があるように感じます。

タスクに埋もれるような状況になってしまったら、自動化したり、効率化したりする他ないです。あとは、予算や人のリソースが足りない場合も自動化と効率化はおすすめです。それ以上に、中長期的に効率化するメリットを把握し、方針として効率化を組み込むのが理想ではあります。

ビジョンステートメントの策定と浸透

FLOURISHの強みは、マーケティングやテクノロジーやクリエイティブを組み合わせて支援をすることができることが挙げられます。 これは、多くの企業が同じような文脈で語っていて、差別化がしづらいことは確かです。

ビジマーケティングやテクノロジーやクリエイティブという言葉の裏側にある具体的なビジョンを策定したことで、差別化は一歩前進しました。

さらに、もう一歩だけ差別化するには、その企業らしさを汲み取ったものであるかもポイントになります。弊社はスタンスとしては、予算の最大化を目的として、プロアクティブな姿勢であり、先見性を持ってソリューションを選定したり、ツールを適用したりします。スタンスの部分がビジョンに反映できているかも考慮しました。

目に見える悩みと本質的な課題

5つのビジョンを策定

辿り着いたビジョンは下記になります。

  • 業務を効率化し、リソースを最大化する「マーケティング業務の効率化

  • データを活用し、アクションまで求める「マーケティングの高度化

  • クリエイティブを補完する「クリエイティブへのテクノロジーの活用

  • ブランドを構築し、マーケティング活動を最大化する「ブランドマーケティング

  • 能動的なアクションを誘発する「インタラクティブ性の実装

これをそのまま言葉にしただけでは伝わらないので、有言実行しかありません。ビジョンに対して、アクティビティプランを決めて実施していくことで、どんな会社であるのか少しずつ浸透していくことができます。

例えば、「マーケティングの効率化」に対しては、コーディングレスなwebサイトの構築に実際にやってみるといった感じです。

ビジョンの設定と差別化

最初に、ビジョンを設定する際に、社会で求められていることや課題に対して、どうアプローチするのかというところを検討しました。

ビジョンを作っただけでは、事業会社でも代理店でもデジマ専業でもないポジションは、どうしてもわかりづらい面はあります。

「なんか面白そう」と思ってもらうためには、ビジョンを実行することも必要になってくるだろうと思います。そして、アクティビティの実行は、スキルアップにつながり、実際にプロジェクトで稼働する際の準備にもなります。準備すること、スキルをつけることがプロジェクトをスムーズに進めるためには必要です。

事業会社でも代理店でもデジマ専業でもない受託側のポジションに、価値を感じていただけるように少しずつ成長して行きたいと思います。

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