マーケティングの未来と、外部リソース活用の是非
マーケティング施策は、デジタル化とライフスタイルの多様性に伴い、多くのチャネルとデバイスに対応していくようになりました。今日では、それらをリアルタイムで分析し、施策をチューニングしたり、次回の施策や戦略に活用したり、マーケティング業務も高度化しています。
企業においては、テクノロジーを早い段階から導入し、トライ&エラーを繰り返し、より高度なマーケティングを行なっている先進的な事例を目にする機会も増えました。
その一方で、本当に意味あるのか?という疑問を解消できずに、テクノロジーの導入や検証を見送っているケースもあります。
コロナ禍においては急速にデジタル化、デジタルネイティブ世代が消費者となっていく未来の到来、加えて少子高齢化による人手不足などのさまざまな理由からマーケティングにおけるテクノロジー活用は避けて通ることはできないでしょう。
今回は、これからのマーケティングと、それを実現するマーケティングの体制について紹介します。まだ、デジタルを活用したマーケティングの準備が整えていないという方々も、今から企業のフェーズや状況に合わせて、構築していくと良いのではないでしょうか。
これからのマーケティングとは
まずは、これからのマーケティングがどのように変化していくのか一緒に考えてみましょう。
マーケティング5.0が2021年に発表され、日本版「コトラーのマーケティング5.0 デジタル・テクノロジー時代の革新戦略」も2022年に発表され反響を呼んでいます。
従来の製品中心の「マーケティング1.0」、消費者志向の「マーケティング2.0」から脱し、人間中心のマーケティング原論を説いた、入門の書『コトラーのマーケティング3.0』。人間中心のマーケティングを実現するためにまったく新しいフレームワーク「5A」を発案した、応用の書『コトラーのマーケティング4.0』。
マーケティング1.0から4.0までの変遷をたどり、マーケティングも徐々に変化してきています。10年前を振り返ってみると、その変化を実感できるでしょう。
昨年、このマーケティング5.0が生まれた背景として、下記の3点が挙げられています。
世代間ギャップ
富の2極化
デジタル・デバイド
これらの課題にして、マーケターは課題を抱えることになるでしょうと書かれています。
さらに、COVID-19によってデジタル化は加速したが、デジタル・ネイティブが世界中で優勢になっていく中で、その準備を進めるべきでしょうとデジタル・マーケティングが推奨されていました。
マーケティングを強化する方法として、ネクストテクノロジーの導入についても触れられています。ネクストテクノロジーとして、AI(人口知能)、NLP(自然言語処理)、センサ技術、ロボティクス、拡張現実と仮想現実、IoTとブロックチェーンが挙げられています。
これらのネクストテクノロジーを活用し、データドリブンマーケティング、予測マーケティング、コンテクスチュアル・マーケティング、拡張マーケティング、アジャイル・マーケティングの実施を可能にする未来について語られています。
初めて目にする横文字もあるかもしれませんが、要するに選択できるテクノロジーの数も増えて、必要な知識とスキルもたくさん存在するようになったということです。
未来のデジタル・マーケティングに向けた準備
今後のデジタル・マーケティングを実施するにあたり、どのようなことがハードルとなってくるのでしょうか。技術や知識とマインドセットの両面から考えてみましょう。
技術や知識の面でのハードル
多くのチャネルやサービスをコントロールする必要が発生し、マーケティング部門では企画力だけではなく、技術力も求められるようになってきました。
キャッチアップの時間も必要
従来型の事業会社のマーケティング部門はとにかく打ち合わせが多く、調整的な業務に時間を取られることも多くありました。それらがすべて無駄な時間というわけではありません、むしろ事業会社で業務をコントロールするにはとても重要で必要なことです。
しかし、テクノロジーのベーシックな知識を持ち合わせること、新しいテクノロジーの特徴を理解すること、どういったマーケティング業務や施策にテクノロジーを適応できるかを考えることに、マーケターは少し時間が足りないかもしれません。キャッチアップに時間を割り当てられるように、企業や部門として取り組む必要も場合によってはありかもしれません。
外部ベンダーとのコラボレーション
スキル面では、自社内だけで完結させるには、テクノロジーの活用はハードルが高くなってきます。外部ベンダーでさえ、個々が専門性を持ち、組み合わせているから実現できることがたくさんあります。外部ベンダーと協力することで、企業が取り入れられるアイディアやスキルの幅は広がるでしょう。
外部ベンダーにスキルを組み合わせてもらうのか、外部ベンダーのスキルを組み合わせるのかで、持ち合わせなければならないスキルや知見も変わってくるように感じます。
マインドセット面でのハードル
従来のマインドではテクノロジーを採用し、導入し、機能させていくことが難しいというのは想像できるでしょう。テクノロジーを適応させるにはトラブルはつきものです、さらに言えば最初から100点を取る必要もないのです。100点を目指してリリースが遅れるくらいなら、早くリリースして試した方が良いでしょう。100点を取りたいがために完璧に作り上げてしまうと、汎用性や柔軟性がない構築になってしまうかもしれません。
このように、テクノロジーを活用するマーケティングにおいてはアジャイルで進めるメリットがあります。
アジャイルで、マーケティング業務にネクストテクノロジーを活用し、マーケティング活動の高度化を目指す
こういった取り組みを行う場合、アジャイル チームは、内部の利害関係者ではなく、顧客に価値を提供する責任があります。
価値のない仕事には「ノー」と言うことが重要です。チームは、計画を通じて、ビジネスの優先順位と達成しようとします。したがって、これらの目標に沿っていないプロジェクトが入ってきた場合、チームはそれを押し返す権限を与えられる必要があります。
トップダウン型で優先順位が決まらない
役職が社内的な状況や立場などから優先順位を決めることも多くありました。そういったトップダウン式の仕事の進め方が当たり前だった時代は、アジャイルマーケティングによって終わりを迎えつつあるかもしれません。
決定権をチームに持たせる、それはやはりアジャイルで高度なレベルのプロジェクトを回すためには不可欠なことになってきます。それなり負荷がかかる状態になり、自分たちで判断することで、「ある日突然、誰かが会社に来なくなった…」ような状態も避けることもできるでしょう。
そして、アジャイル マーケティングは無駄を削除します。家のクローゼットに10年間着ていない服と同じように、価値がないのにそのままになっているマーケティング業務もあるのではないでしょうか。今までと違った概念で業務を遂行することに難しさや戸惑いを覚える人もいるかもしれませんが、やってみると馴染むかもしれません。
アジャイルマーケティングの体制
高度なアジャイルマーケティングを行うためには、外部リソースを取り入れることはとても理にかなっています。このアジャイルマーケティングのメンバーは、社内である、社外であるというより手を動かせるかどうかです。
必要なメンバー/コンテンツ ライター、SEO スペシャリスト、グラフィック デザイナー、ソフトウェア開発者、データ分析者など、実行能力のあるメンバー
リーダーは、マーケティング オーナーもしくはマーケティングリードです。
リーダーは、チームに何をすべきかを指示します。権限を与えるリーダーは、チームに意見を求め、ガイダンスとサポートを提供します。特に効果的に優先順位を付けるマーケティング担当者の能力は非常に重要です。
アジャイルチームを統括するマーケティングリードさえ、外部ベンダーでも良いでしょう。腕があって、目的に対してポジティブな人間であれば適任と言えるでしょう。
外部リソースは下請けからパートナーの存在へ
従来の外部リソースと言えば、下請けと言われ、なるべく値切って安くアウトソースするというようなことが常識でした。今や外部リソースはとても大切なパートナーという位置付けになっています。
外部リソースに関して、専門性の高い領域で選択肢に入れなければいけない機会も増えてくる昨今、安くタスク業務をやってもらう下請けという考えから脱却し、専門性のあるパートナーとして考えることが必要です。関わる人に最高のパフォーマンスを発揮してもらうために、それぞれがどのようなコミュニケーションをとるべきか、フラットに考える時代になってきたと言えるでしょう。
パートナーがより良い環境で働き、より良いパフォーマンスを行うためにはどのようなスタンスでいるべきか、専門性に対して何を理解しているかで関係性は大きく変わってくるでしょう。