ブランディングが先か、マーケティングが先か、データ戦略が先か

ブランディングが先か、マーケティングが先か、データ戦略が先か

ブランディングとは、企業の明確なアイデンティティと消費者にとってのブランド体験を開発するプロセスです。マーケティングとは、調査からの洞察を使用して、企業が製品やサービスを特定の市場セグメントに宣伝するための戦略を指します。

従来のマーケティングのプロモーション(広告・宣伝)は、広告スペースに対して料金を前払いしていました。例えば、新聞広告、TVCM、雑誌広告などはおおよその視聴者や購入者はわかるものの、その効果を保証するものでは決してありません。効果の分だけお金を支払えるような施策でもありません。

それに対して、パフォーマンスマーケティングは、アクションを決定し、販売、リード、クリックなど、そのアクションが完了すると支払うことができ、結果をコントロールしやすくなりました。そのため、マーケティング領域のプロモーションに関する予算をパフォーマンスマーケティングが占めるようになっていきました。

最近では、顧客データや履歴、ソーシャルメディアやインターネット広告などあらゆるデジタルチャネルからデータを蓄積できるようになり、データ分析によるミクロかつ短期的なマーケティング施策に流れている傾向があります。

用語の定義

  • ブランディング/ 企業の明確なアイデンティティと消費者にとってのブランド体験を開発するプロセス

  • マーケティング/ 調査からの洞察を使用して、企業が製品やサービスを特定の市場セグメントに宣伝するための戦略

  • パフォーマンスマーケティング/ クリックやコンバージョンなどの結果に対して、広告主がマーケティング会社または広告プラットフォームに料金を支払うオンラインキャンペーンを指す用語です。

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最近は、「自社のパフォーマンスマーケティングは素晴らしいが、ブランドは最悪だ」と思っている経営者層も多いそうです。データに依存したマーケティングが進む中、そのデメリットもあるでしょう。

ブランディングが優先されるべきなのか、マーケティングを優先させるべきなのか、パフォーマンスマーケティングを優先させるべきなのか、データ駆動型のデジタルマーケティングを優先させるべきなのか、考えてみます。

パフォーマンスマーケティングの台頭

マーケティングがパフォーマンスマーケティングに寄っていくほど、ブランディングの重要性は軽んじられる傾向があるように感じます。

なぜ、マーケティング領域でパフォーマンスマーケティングの存在感が増し、ブランディングは弱まっているのでしょうか。

一つ目の理由は、マーケティング領域の経験の浅いテクノロジーに強い人やデジタルマーケに強い人が台頭していることも一つの理由かもしれません。何が優れたブランドストーリーなのか、ブランディングとは何か、さらにはマーケティングとは何か、本質的な理解できるような経験はしていないかもしれません。

そして、最も大きな理由は、パフォーマンスマーケティングはリアルタイムに数字を把握し、ある程度の予算の再配分や最適化などのコントロールができることが挙げられます。そのためパフォーマンスマーケティングの結果をビジネス成果と結びついて語りやすく、パフォーマンスマーケティンは売上に結びついていると感じやすいです。

一方で、ブランド構築は、財務との結びつきを示せずにきた歴史があります。「認知度」や「好感度」などの指標はあるものの、それが適切な価値の指標だったかと言えば、物足りなさはあるかもしれません。財務に結びついた形でブランディングの価値を説明しきれていなかったことで、予算が割かれなくなったとも考えられます。

クリエイティブ < データドリブン??

2022 年のカンヌ ライオンズ国際クリエイティビティ フェスティバルに先立ち行われた調査では、実際に2011 年から 2018 年までの急速な成長期間 (87% 増加) の後、チーフ クリエイティブ オフィサーの数は過去 4 年間で 4% 減少しました。

この数字を見ると、感覚的に10年前のブランディングは今と違って深く考えられていて、戦略的で、創造的だったなという感覚はあっていたのだなと感じます。

CMO の役割に関する分析では、デザインスキルの需要は 2019 年以来 41% 減少し、現在は分析スキルの需要をはるかに下回っています。この結果にも納得します。私自身もデータ分析にシフトしましたし、ある程度は時間をとってキャッチアップしました。

CMOは創造的なスキルと比べて、分析的スキルの方を重要する傾向がある

参考:the 2022 Cannes Lions International Festival of Creativity

CMOが欲しているスキルは、現在は分析的なスキルなのでしょう。ただ、CMOレベルの上流工程を行う場合は、事業会社であれ、代理店であれ、どちらの知識も必要になることが伺えます。

マーケターの役割は常に進化するからキャッチアップが必要

マーケティングはトレンドや生活様式、社会的な背景によって変化するので、どうしてもキャッチアップの時間は必要です。常にちょっとずつ変化しています。

個人的には、マーケティングリードは、基本的な知識とスキルを持ち合わせて、的確な指示と効率的な体制を作る必要があります。そのために日常的にキャッチアップすることは、とても重要だと思います。 テクニックやスキルを身につけることで、創造的かつ現実的な発想も浮かびやすいでしょう。

データニーズは高まっていますが、10年以上続けている既存のマーケターと、データサイエンスやエンジニアやオペーレーターを、昨今の潮流の中で1対1で交換すれば良いということではないでしょう。

マーケターの持続可能な働き方とは

少し話は脱線してしまいますが、従来のエージェンシーや非マーケティング管理職の配下では、マーケターは目の前のタスクをこなして、それまでのスキルで使えるだけ使い倒されることもあるようでした。しかし、変化が激しいマーケティング領域で、キャッチアップの時間もないほど使い倒されることは、そのマーケターは5年後には仕事がなくなることを意味するのではないかと私は思ってしまいます。

マーケターに目の前のタスクだけこなせる状況は、経営側にもマーケター個人にもマイナスに作用し、単に働き方改革とかの文脈ではなくて、持続可能な働き方を考える上でもキャッチアップとインプットと実務(アウトプット)のパランスは大事でしょう。

パフォーマンスマーケティングやテクノロジーが優先されやすい理由とその課題

ブランド構築は長期的な投資であり、パフォーマンス マーケティングは短期的ですぐに収益を生み出します。ブランド構築とマーケティングのバランスをとることが重要でしたが、徐々にバランスは壊れ始めているのではないでしょうか。

財務に結びついて説明しやすいパフォーマンスマーケティングが優先される

パフォーマンスマーケティングやデジタルマーケティングを中心としたマーケティング活動が、数字がリアルタイムで見えるだけに、ROIとも結びつけやすいメリットがあります。マーケティングというよりは営業的かつ財務的な感じさえします。

従来はマーケティングは支出ばかりするコストセンターという認識と戦ってきました。なかなか稟議が通らず8回くらい説明した経験もありましたが、デジタルマーケティングやパフォーマンスマーケティングは財務的でCFOへの説明はつきやすく、予算を取りやすくなります。

パフォーマンスマーケティングだけが優遇される課題

ブランディングとマーケティング(とりわけパフォーマンスマーケティング)のバランスが崩れてしまうと、マーケターはどうしても短期的なタスクに追われてしまい、中長期的な視点が失われ、疲弊する可能性もあります。

そして、マーケターが短期のタスクをこなすことだけになっていると、市場にインパクト与えるようなアイディアが創出されにくい状態になるでしょう。本来、マーケティングは、4P(プロモーション、プライス、プロダクト、プレイス)といった幅広い領域に対応します。パフォーマンスマーケティングはあくまでもプロモーション領域。狭いプロモーション領域でのミクロ視点しか育まれないので、俯瞰した視点を持ったマーケターも育ちにくいでしょう。

さらに、いつまでデジタルの世界を人間が好み続けるのかーー個人的には少しわからないとは感じたりはしますが、どうなのでしょうか。注意深くは人々の生活様式や価値観の変化をウォッチしておくには越したことはないでしょう。

マーケティングテクノロジーの導入における課題

Gartner2022年の調査では、マーテックスタック全体のうちで利用しているのはわずか 42% であり、2020 年の 58% から減少していました。過去2年間でマーケティングテクノロジーの利用が16 ポイント減少したことになります。減少した理由は、ソリューション間の重複部分がかなり大きかったこと、利用を促進する人材の特定と採用の難しさ、エコシステムの複雑さや無秩序さなどが挙げられています。

マーケティング部門で、ソリューションの選定から運用までのスキルが既存の人材では難しいのかもしれません。さらに外部ベンダーも事業会社への理解がなく、利活用の進まない導入となっている可能性もあるでしょう。

ブランド、マーケティング、データ活用は1対1で交換できるものでも、ヒエラルキーをつけるものでもない?!

現在、マーケティング部門において、必要とされるニーズの変化もあり、過渡期のような状態であるかもしれません。しかし、既存のマーケティングスキルを否定することはナンセンスですし、既存のスキルはブランド構築やマーケティング戦略の土台になります。

今後、企業のマーケティング活動において、どのようにブランド、マーケティング、データ活用を考えるべきか考えてみましょう。

ブランドマーケティングの登場

ブランディングとマーケティングに関連する概念を組み合わせたブランドマーケティングが登場しています。ブランディングとマーケティングは、同じものではありませんが、関連づけることで、どちらの良いところも美味しいところ取りをしようじゃないかと古くから頑張ってきたマーケターは考えたのでしょう。ブランドマーケティングは、取り入れやすい方法です。

バランスを維持するためにも、ブランディングや既存のマーケティング施策(ブランディング要素が強い広告・宣伝)は、財務や利益に結びつけにくいというところ改善すべきではあるでしょう。それに対してデータ活用を行うことも私は一つだと考えています。

ブランディングとマーケティング、データ活用の融合

ブランド構築とパフォーマンス マーケティングをより効果的に連携させるのに役立つ 4つのポイントを紹介します。

  • 短期と中長期の視点のバランスを取ること

  • ブランド構築の目標を明確し、マーケティング目標に転換させること

  • パフォーマンス マーケティングは測定可能ではないかもしれないこと(ROIに結びつけやすいだけなのかもしれない)

  • ブランド構築の評価が過小されやすいので適切な指標を考えること

次回は「ブランド構築の指標」「データを活用したマーケティング施策」について考えてみたいと思います。どこまでロジカルに積み重ねて、ブランディングとブランディング要素の強いマーケティング施策をできるのでしょうか。

なお、FLOURISHでは、マーケティング戦略、マーケティング戦術の立案と実施についてお手伝いします。マーケティングの予算配分や、ブランド構築やパフォーマンスマーケティングの評価、マーケティングテクノロジーの利活用などお困りなことがありましたら、お問合せください。

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