CMOの離職率がCEOやCFOと比べて高いのはなぜ?

CMOの離職率がCEOやCFOと比べて高いのはなぜ?

CMOとはチーフマーケティングオフィサー(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)のこと。経営陣の一員としての役割も担います。多くのマーケターが憧れているタイトル(役職)かもしれません。

2017年にハーバード大学が行った調査で、CMOの離職率がCEOやCFOと比べて、高いことがわかりました。この調査をきっかけにマーケティングのトップの在職期間が短いことは有名になりました。

マーケティングに関わる人にとっては少々ネガティブな話題。ネガティブなことも見方を変えればポジティブになるかもしれません。

ということで、パッと見はネガティブなテーマに触れていきます。

この記事を通して、「CMOはなぜ在籍期間が短くなるのか?」「CMOが長期的に活躍することによる企業側のメリットは何か?」「CMOが長期的に活躍する条件は何か?」を紐解いていきます。

CMOの平均在籍期間

スペンサースチュアート(Spencer Stuart)の最新の調査結果によると、2021年のCMOの平均勤続年数は40カ月で、この10年以上で最短でした。一方でCEOの平均勤続年数は85カ月と倍以上になっています。

2017年の人材紹介会社コーン・フェリー(Korn Ferry)の調査では、CMOの平均勤続年数は4.1年であるのに対し、CEOは8年、CFOは5.1年。

なぜ、CMOは辞めるのか?

ハーバードレビューでは、大手小売業者の話が書かれていました。

CMO を目指す人なら誰でも望んでいるような機会であるように思えて自分の名を残そうと決意して入社したCMO。しかし、広告やソーシャルメディアを含むマーケティングコミュニケーションに限定された業務に不満を覚えて、一年後に退職したそうです。

CMOで入社して、事業の成長を促進する戦略を立てる権限があるだろうと考えていた場合、マーコミュ(マーケティングコミュニケーション)だけしか権限が与えられなかったら、萎える気持ちはわかる気がします。

一方で、個人的には、CEOと何回か会話することで、ある程度はCMOやマーケティングに関するニーズを直感的に嗅ぎ取ることはできるはず。

2018年のFournaise Marketing Group による世界的な調査では、CEOの80%が マーケターを信頼していないことが明らかになりました。これはマーケターにとって憂慮すべき調査結果かもしれません。ここまで数字が高いと、マーケターを評価している20%も、実はマーケター側が評価して欲しいポイントではない部分を評価している可能性もあるのでは?と思ってしまいます。

一方で、同調査では、CEO自身の経験不足やマーケティング部門の理解の不足が原因で、マーケターのパフォーマンスが低く認識されている責任があることを認めています。

辞めても次があるCMOたち、落ちこぼれ集団ではない?!

調査会社スペンサースチュアート(Spencer Stuart)のFortune 500(全米上位500社)の企業を対象にした2022年の調査では、CMO の在職期間は平均 51か月。Fortune 500の企業では、事業がより複雑で、短期的な成功がマーケティング活動に直接結びつかないため、他のCMOよりも在職期間が長くなる傾向にあります。

この調査では、CMOの77%が、自分の組織内または別の組織内で、部門マネージャー、社長、執行副社長などのより高いレベルの役職に就いたと報告されています。

つまり、CMOたちはより良いポジションにオファーされているようです。

調査会社は、より良いポジションにCMOが昇進する理由を挙げています。

  • CMOの能力が向上していて、より高いレベルの役職につける(CMOの権限にマーケティングテクノロジーなどの要素が含まれるため昇進しやくなっている)

  • CMO自体が通過点になっている

このからCMO(マーケター)が落ちこぼれ集団で、転職しているわけではないことはわかります。

CMOの在職期間が短い理由

CMOの権限とCEO の期待との間に不一致があり、上手くいかないこと。もう一方で、より良いポジションに就いたCMOも多いことからCMOが変化を求めている可能性もあるかもしれません。

下記、CMOの在職期間が短い要因を整理してみました。

  1. 権限と期待値の不一致

  2. CMOが変化を求めて転職する

  3. 大きな仕事を求めて、もしくはリーダシップを発揮するために、転職する

私もマーケティング領域でお仕事をしていますが、どれも見てきた光景でもあります。「2」「3」による転職は、期待値に対して応えた上で、次のキャリアを考えるのはごく自然なことだと思います。

不一致の解消のためにできること

どんなタイプのCMO(マーケター)がいて、どのような企業に適しているかを考えてみましょう。

どんなタイプのCMOがいるのか?

大きく3つのタイプがいます。必要な人材の設定を間違えると不一致が起こります、マーケターのタイプを確認しましょう。

  1. 戦略の設計(損益管理、イノベーション、販売、流通、価格設定)/複数ブランドを展開するメーカー企業や一部のB2B サービス企業

  2. マーケティングコミュニケーション(市場投入)/B2B サービス企業など

  3. 戦略の設計&マーケティングコミュニケーション/消費財やメーカー

「1の戦略の設計」ができる人は、「2のマーケティングコミュニケーション」はできることが多いです。日本でマーケティングだと思われているのは、2のマーケティングコミュニケーションで、これは下流工程です。

「1.戦略の設計」からキャリアをスタートさせたマーケターに、「2.マーケティングコミュニケーション」だけをやりなさいと言えば、物足りなくなる。「2.マーケティングコミュニケーション」だけをやってきた人に「1.戦略の設計」を求めると、スキルが足りない。

どのタイプのCMOがどんな条件下で活躍するのか?

自社のイノベーションによってニーズが生み出されたと考えている場合(重工業、工業、テクノロジー、高等教育、医療、B2Bなどの企業)は、「2.マーケティングコミュニケーション(市場投入)」の人が向いているかもしれません。

成長が遅い業界や競争の激しい業界の企業は、「3. 戦略の設計&マーケティングコミュニケーション」が適しています。

成長が容易であり、企業にとっての課題が少ない場合には、「2.マーケティングコミュニケーション(市場投入)」が適しています。

変化が激しい場合、「1.戦略の設計」のできる人が良いでしょう。

権限と期待値のジレンマ

社外のCMOやマーケターの活用でジレンマを減らせる?

「権限と期待値の不一致」は社内外問わずに発生することです。社内で発生する不一致は、大きいもの(離職)になるため、社外のCMOやマーケターを活用することも一つです。たとえ、不一致が起きたとしても、少しずつズレを解消しながら、問題なくやっていくことができます。

それは、社外のマーケターはプロジェクトに合わせて、組織体制を適した形にしていくことができるからです。社外のマーケター(受託側にマーケター)はプロジェクトマネージメントには長けていて、一人の力ではなく、チームの総合力で対応できるのは魅力です。

また、期待値のズレの解消は経験上になりますが、社外のポジションの方が客観的な視点を持って対応しやすい可能性はあります。

アジャイル or 厳密な設計とタスク管理

大手コンサルティングファームとお仕事をご一緒させていただくと、「期待値」というワードがよく出てきます。特にシステム導入などでは、「期待値」を明確にし、工数と金額を算出することが重要になってきます。しかし、マーケティングでは達成できる期待値と、達成が不確実な期待値があるため、当初の設計で走らせることをファーストプライオリティにするのは一長一短です。

マーケティングの期待値を管理するもう1つの方法に「アジャイルマーケティング」があります。外部のエージェンシーであっても、弊社のマーケティング業務は、インハウス気味に対応することが多く、アジャイルで対応します。そのため、自ら「期待値」をコントロールさせていただけることが多いです。アジャイルでマーケティングを行うことは、変化の激しい今の時代には適していますが、想像以上にマーケターはスキルと体力が必要で、かなりのエネルギーを脳から消費するものです。アジャイルマーケティングは、分析と調整を行いながら進めます(細かい指標の目標の変更、対応内容の変更が発生します)。マーケターの負荷、工数と金額が見合わないことも発生してしまうリスクがあり、発注側の社内のCMOやマーケター、経営層の存在と理解と管理が不可欠な方法でもあります。

参考:Which C-Suite Leader Is Most Likely To Change Jobs? New Study Suggests The CMO|forbes

参考:Most CMOs Who Leave Their Jobs Move Up, Study Finds|The Wall Street Journal

Related

関連記事

ご相談やお仕事の依頼など
お気軽にお問い合わせください。

CONTACT