マーケティングにデータサイエンスを活用したユースケースTOP10

マーケティングにデータサイエンスを活用したユースケースTOP10

2010年代初頭、企業は膨大な量のデータを抱えていることに気づき始めました。AIやデータ活用で、最初に脚光を浴びたのは、業務効率化が語られるDXだったようにも感じます。非構造化データを読み込む画像処理、音声認識をするチャットボット、それらを連携して自動化するRPAなどがDXの火付け役でした。

しかし一方で、日本では、本質的な業務のクオリティを向上させる、より適切なサービス・プロダクト提供にデータサイエンスを活用していくことは一歩出遅れたような感じはします。 業務部門では、本業の精度やクオリティーを上げるようなデータ活用は難解であり、おそらく業務効率化するよりも遥かにハードルは高いでしょう。 あるべきものを効率化する思考と、これからを描く思考。データサイエンスを活用して、これからを描く思考はとても創造的であり、チャレンジングな業務になってくるでしょう。

今回はデータサイエンスを活用したマーケティングの事例を紹介していきます。皆様のビジネス現場でのヒントにしていただけましたら幸いです。

予測マーケティング、データドリブン・マーケティング、データサイエンスとは一体?

予測マーケティング、データドリブン・マーケティング、データサイエンスといった言葉を聞いたことはありますか?

まず、データドリブン・マーケティングと予測マーケティングの違いに関して、少し難しいように思いますので解説します。

データドリブン・マーケティングとは

まずは、データドリブン・マーケティングはデータに基づくマーケティングのこと。 例えば、解約しそうな顧客を絞り込み、カスタマー ジャーニーを最適化およびパーソナライズする機会を生み出し、コンバージョンを促進し、解約を減らします。

予測マーケティングとは

予測マーケティングとは、機械学習によって、パターンやモデルを発見し、未来を予測分析した結果を活用するマーケティングのこと。製品管理、顧客管理、ブランド管理において、予測分析を適応することで、先を見越したマーケティング計画やリスク管理、プロダクトの企画、制作から販売までのプロセスまで幅広く役立てられています。

予測分析に欠かせないデータサイエンス

データドリブン・マーケティング、予測マーケティングのどちらにおいてもデータサイエンス(データ科学)という新しい学問の力を使います。

データサイエンス(データ科学)とはデータを入力し、意思決定や社会的な知見を引き出そうとするプロセスを数理的に扱う学問です。

データサイエンスができること

データサイエンスのできることは、主に「データを比較する」「データから要点を抽出する」「データを分類する」「データから予測する」の4つに大別できると考えています。

  • 比較:データを比較する

  • 要点抽出:データから要点を抽出する

  • 分類:データを分類する

  • 予測:データから予測する

もう少しビジネスフェーズに合わせて、データサイエンスを難易度順に並べると、「過去や現状の把握」「事象の関係性を把握」「因果関係の把握」「将来の予測」「意思決定の最適化」になります。(ビジネスの難易度も上がれば、データサイエンスの技術や知識レベルも上げていく必要があります。)

「過去や現状の把握」「事象の関係性を把握」「因果関係の把握」で、データを比較したり、要点を抽出したり、データを分類したりします。 「将来の予測」で、分類を予測したり、データの関係性から今後の推移を予測したりします。 「意思決定の最適化」では、モデルを使い、パラメータを動かすことでの変化を把握し、アクションに活用するための意志決定を行います。

つまり、究極的にシンプルに考えようとすると、「比較」「要点抽出」「分類」「予測」を行うということです。データサイエンスのできることは「データサイエンス、何ができる?データサイエンティストとは」で詳しく紹介しています。

データサイエンスを活用したマーケティングの活用ケース(ユースケース)

マーケティングにおいて、データサイエンスで何ができるのか漠然としている方も多いのではないでしょうか。企業のマーケティング活動でのデータサイエンスの活用ケース(ユースケース)を10つピックアップしています。

1.解約防止(Churn Prevention)

企業は顧客を失うと新規顧客を獲得し、売上を補わなければいけません。しかし、新規獲得にかかるコストは、既存を維持するよりもコストがかかります。釈迦に説法だとは思いますが、新規獲得コストと既存維持にかかるコストを比で表した「1:5の法則」が存在します。新規顧客に販売するコストは既存顧客に販売するコストの5倍かかるということになります。データサイエンスによる予測分析モデルは、顧客の解約を防止し、顧客を満足させ、収益を確保することに役に立ちます。

2.顧客生涯価値(Customer Lifetime Value)

長期間にわたって一貫して多額のお金を使う可能性がある顧客を特定することは非常に困難です。マーケティング戦略を最適化し、会社と製品に対して最も重要な生涯価値を持つ顧客を獲得できます。 デジタル化が加速したことにより、マーケティング戦術(実施もしくは打ち手)においてリアルタイムに把握し、短期で変更によってマーケターが疲弊するケースもありました。本来、マーケターは中長期を見ることも重要な役割です、データを活用して長期的視点を持てるという取り組みにつながるでしょう。

3.顧客セグメンテーション(Customer Segmentation)

マーケティングでは顧客をセグメントして、戦略を検討していくことはよくある手法です。適切なクラスタリングを、予測分析を使用することでできるようになるでしょう。正確な洞察と指標に基づいて、今までマーケターが手作業で行なっていた作業を、より高度により効率的にセグメントできます。

4.製品の傾向(Product Propensity)

製品の傾向は、購入活動と行動のデータをソーシャル メディアや e コマースのオンライン行動指標と組み合わせたものです。これにより、製品やサービスの購入に対する顧客の関心と、それらの顧客に到達するためのメディアやコンテンツを特定できます。 どのようなインフルエンサーが適切なのかも割り出すことができるようにもなり、予測分析が感覚的に企画されていたプロモーションをロジカルに支えます。

5.感情分析(Sentiment Analysis)

顧客の投稿やフィードバックを使用してツールをクロールすることで、市場でのビジネスの評判を明確に把握できる分析を作成できます。予測分析モデルは、その評判を高める最善の方法として、プロアクティブな推奨事項を提供します。

6.アップセルとクロスセル(Up-selling and Cross-selling)

コンビニで「おにぎりを2つ買った人にXXプレゼント」などは、アップセルの方法の一つです。「おにぎりと一緒にXXを買った人は30円OFF」はクロスセルになります。製品セットで限られた市場で収益を最大化することは重要です。 釈迦に説法になるかもしれませんが、これらのアップセルとクロスセルには、「MECE(ミーシー)」というフレームワークがとても重要です。MECEであるかどうかマーケティングのベーシックの基礎を踏まえた上で、購入履歴データを利用して、どの商品やサービスを一緒に提供することでメリットが得られるかを判断できます。

7.購買行動の予測(Predicting Buying Behavior)

e コマースの小売業者は、顧客の購入パターンを予測するために PoS に予測分析を組み込みます。ウォルマートとP&Gはその好例です。在庫データと売上・在庫・価格などの情報を提供し、P&Gは共有された情報から販売予測と在庫管理を行い、VMI(Vendor Managed Inventory)を実現しています。VMIはベンダー主導型の在庫管理を意味し、不良在庫の削減や、在庫回転率の向上といったメリットがあります。

8.コンテンツの推奨(Conetent Recommendation)

予測分析の最も一般的なユース ケースの 1 つです。エンターテイメント企業は、視聴履歴と予測分析技術に基づいて、ユーザーが何を見たいかを簡単に予測できます。Netflix は予測分析アルゴリズムを利用して、ジャンル、キーワード検索、評価などに基づいてユーザーにコンテンツを推奨しています。

9.キャンペーン管理(Campaign Management)

予測分析アプリケーションは、キャンペーンの焦点をどこに置くのが最適かを判断するのに役立ちます。施策の意思決定を行う人物や組織の目的にそった活動の延長上で作られています。具体的には,DM送付などの広告施策であれば,担当者はユーザの反応率を上げるために,反応しやすいであろうユーザに対してのみDMを発送します。しかし、DMを送るとどんどん開封率が下がってくると、今度どうすべきなのかと担当者は頭を抱えても、適切な分析が難しかったりします。

10.ボリューム予測(Volume Prediction)

量の変動を分析することで、顧客へのサービスの質をコントロールできます。例えば、受電数を予測し、オペレーターを配置するようなことができます。

データサイエンスを活用したマーケティング活用事例

Netflixでは、運用および財務の観点から映画制作を最適化するために分析を使用していることです。 Netflixは分析を使用して、アプリでのユーザー エクスペリエンスから撮影現場のロジスティクスまで、すべてを最適化しています。たとえば、ある場所と別の場所での撮影の予測コストを予測するアルゴリズムを開発しました。また、アナリティクスを使用して、ボトルネックを減らし、ワークフローを合理化することで、編集などの撮影やポストプロダクション活動の効率を高めています。

参考:Data Science at Netflix: How Advanced Data & Analytics Helps Netflix Generate Billions

世界をリードする化粧品ブランドである L'Oréal は、Synthesio が開発した AI 対応の消費者インテリジェンス プラットフォームを使用して、美容トレンドを先取りし、予測分析で製品開発を強化しています。

アジア、中東、ヨーロッパで事業を展開する大手ブランド ディストリビューターの Aydinli は、デジタル エクスペリエンス企業の Acquia を利用して、ターゲットを絞ったキャンペーンのオーディエンスを迅速かつ正確に特定しました。

FLOURISHのデータサイエンスの適応へのスタンスと考え方

stages of data analytics maturity ガートナーの 4 フェーズ成熟度モデル

上記のグラフは、Gartnerが作成したモデルで、幅広い文献で使用されています。企業が現在データ成熟度のどの段階にあるか、データと分析の成熟度を表しています。

提示されたすべてのステージ (またはタイプ) により、企業は生データから有意義なビジネス インサイトまでの道のりをたどることができ、それぞれが独自の結果を提供し、異なる目的を果たします。

  • Descriptive Analytics.(記述分析)

記述的分析は、データを使用して会社で何が起こったかを説明します。過去の会社の業績を把握するためによく使用します。

  • Diagnostic Analytics.(因果・相関・時系列分析)

データの問題や発生を診断することに重点が置いて、物事が起こる理由を探します。会社は業務を調整して状況を改善することができます。

  • Predictive Analytics.(予測分析)

以前のデータに基づいて何が起こるかを予測します。

  • Prescriptive Analytics.(最適化)

ビジネスに対する意思決定をおこなします。

すべてのデータ分析プロジェクトは、それぞれのケースで高度なカスタマイズが行われるためだけでなく、各企業が入力として使用する独特のデータ セットによっても異なります。

半年から1年をかけてFLOURISHではデータサイエンスをプロジェクトとして、フェーズに合わせて成熟させていくことを推奨しています。

マーケティングのための予測分析のほとんどの実装プロセスは、以下に示す通りになります。

  1. プロジェクトの定義

  2. データ収集

  3. データ処理

  4. モデリング

  5. 解釈

今日に至るまで、予測分析は、リードジェネレーションからチャーン予測まで、データに基づく予測でマーケティングのあらゆる側面を変革できる重要なツールになりました。スマートなデータ分析のおかげで、マーケティング担当者は役に立たないデータを破棄し、貴重な洞察のみを使用して販売およびマーケティング戦略を強化できます。

Related

関連記事

ご相談やお仕事の依頼など
お気軽にお問い合わせください。

CONTACT