健康食品の広告担当者が知っておきたい景品表示法の9つのポイント
景品表示法に基づく広告の取り締まりは頻繁に行われ、違反すると企業名や違反内容が公表されます。企業にとっては痛手です。健康食品販売企業の広告担当者が知っておきたい景表法の9つのポイントを解説します。
景表法とは?
景表法の正式名は「不当景品類及び不当表示防止法」。
世の中には売上を伸ばすために、実際よりも品質・性能が優れた商品であるとウソをついて宣伝する販売業者もいます。広告を信じて購入した消費者は不利益を被りますよね。
このため、景表法は商品・サービスの品質や取引条件などについて、事実と異なる表示を禁止しているのです。
ポイント1 景表法の規制が及ぶ表示とは?
景表法の規制は広範囲の表示に及びます。
容器包装の表示をはじめ、テレビ・新聞・雑誌の広告、ウェブ広告、チラシ、パンフレット、説明書、ホームページなどが代表的なもの。ダイレクトメールやファックスも含まれます。
さらに、口頭による説明にも規制がかかります。「話すだけなら大丈夫」と思っていると間違いです。
ポイント2 景表法の規制の対象者
景表法の規制の対象者は、商品・サービスを供給する事業者です。このため、メディアや広告代理店などは対象外となります。
一方、商品を消費者に直接販売していないからといって、別の会社(販売会社)と共同で違法な表示を行った場合は、景表法の規制がかかってきます。
言い換えれば、規制の対象は「表示を行った事業者」となります。次のようなケースが該当します。
自らまたは他者と共同で、積極的に表示内容を決定した事業者。
他者による表示内容の説明に基づき、表示内容を決めた事業者。
他者に表示内容の決定を委ねた事業者。
ポイント3 優良誤認表示と有利誤認表示
景表法は不当表示を禁止しています。不当表示は主に「優良誤認表示」と「有利誤認表示」に分かれます。
「優良誤認表示」とは、実際よりも品質や内容が「著しく優良」と思わせる表示。
「有利誤認表示」とは、価格や取引条件について、実際よりも、または競合品と比べて「著しく有利」であると誤認させる表示です。
健康食品の効果を実際よりも大きく見せるような表示は「優良誤認表示」に該当します。一方、「お試し」とうたいながら実際には定期購入が条件である場合は「有利誤認表示」となります。
ここでいう「著しく」とは、どの程度を意味しているのでしょうか。わかりやすく言えば、その表示がなければ消費者は購入しなかったと考えられる程度を指しています。
ポイント4 アフィリエイト広告は販売業者の責任
アフィリエイト広告も景表法の規制から逃れられません。
「アフィリエイターが勝手に違法な広告を作成した」と主張する販売業者も多いのですが、そうした言い訳も今後は通用しなくなります。というのも、消費者庁は2022年2月15日に検討会報告書を公表し、アフィリエイト広告の責任は広告主(販売業者)にあることを明確にしたからです。
ポイント5 不実証広告規制とは?
表示を取り締まる際に、行政機関は品質・性能が実際よりも「著しく優良」かどうかを判断します。
たとえば、サプリメントの広告で「1カ月で10㎏痩せられる」と表示した場合、本当にそうなのかを検証します。
この場合、行政機関は事業者に対し、15日以内に表示の裏付け資料の提出を求めます。つまり、効果の立証責任は事業者側にあるわけですね。この手法を「不実証広告規制」と呼びます。
事業者が提出した資料について、行政機関では専門家の意見を聞くなどして検証。その結果、合理的な根拠と認められない場合は景表法違反となります。
ポイント6 合理的な根拠とは?
では、合理的な根拠とは何でしょうか。「不実証広告規制の運用指針」によると、次の2つの要件を満たすことが必要としています。
提出資料が客観的に実証された内容である。
表示された効果・性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応している。
客観的に実証された内容とは、「試験・調査によって得られた結果」「専門家、専門家団体、専門機関の見解または学術文献」を指します。これらによって実証された内容が、広告の内容と一致していることが求められるわけです。
たとえば、サプリメントの臨床試験では3カ月摂取してウエストサイズが1cmしか減らなかったのに、広告では見た目でわかるほどウエストが細くなると表現した場合、景表法違反に問われます。
ポイント7 打ち消し表示
健康食品の広告では、効能効果の表示とともに「個人の感想です」「個人差があります」という表示を見かけることも。こうした表示を「打ち消し表示」と呼びます。
取り締まりを避けようと、打ち消し表示を記載するわけですが、実際にはほとんど意味がありません。
というのも、打ち消し表示の多くは小さな文字で書かれていたり、離れた場所に記載されていたりするからです。効能効果の表示の方が目立つようでは、打ち消し表示は意味を持たないと判断されます。
ポイント8 景表法に基づく措置命令
景表法に違反すると、行政機関から「措置命令」が出されます。措置命令は消費者庁のほか、都道府県も出すことができます。
【措置命令の内容】
違法な表示を速やかにやめる。
表示内容が実際よりも著しく優良であると示すもので、景表法違反である旨を一般消費者に周知徹底する。
再発防止策を講じて役員と従業員に周知徹底する。
今後、表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、同様の表示を行わない。
ポイント9 課徴金制度
措置命令に加えて、課徴金納付命令も出されます。課徴金納付命令は消費者庁のみに権限があります。
課徴金額は、違法な広告を行っていた期間の売上高の3%。対象期間は3年間を上限としています。ただし、課徴金額が150万円未満のケースでは課徴金納付命令を出しません。
景表法に違反すると報道されることも珍しくなく、企業イメージのダウンは避けられません。特に健康食品販売企業にとっては、景表法を十分に理解し、広告の管理を徹底することが重要です。