オウンドメディアの役割と変遷
オウンドメディアが日本で流行した2014年くらいから、もうすぐ10年が経ちます。オウンドメディアを取り巻く状況も、テクノロジーの進化や消費者の生活様式の変化やトレンドの変化で変わっていきます。 「オウンドメディアとは何か」「オウンドメディアの目的や役割は何か」「オウンドメディアにはどのような種類があるか」といったオウンドメディアの解説から、オウンドメディアの変遷を紹介します。
オウンドメディアとは
オウンドメディアとは、トリプルメディアの1つです。トリプルメディアとは、企業や団体がメディア戦略で活用する媒体(メディア)を、「ペイドメディア(paid media)」、「オウンドメディア(owned media)」、「アーンドメディア(earned media)」という3つチャンネルに整理・分類する考え方です。このトリプルメディアは、2009年に日本アドバタイザーズ協会のWeb広告研究会が「トリプルメディア」を提唱してから、多くのマーケターに知られました。
オウンドメディアの役割や種類
オウンドメディアとは、広義の意味では、企業やブランドが所有し、管理運営するメディア全般のこと。 オウンドメディアは広義の意味で捉えると下記のようなことがオウンドメディアに含まれます。
オンライン… ECサイト、ブランドサイト、コーポレートサイト、メルマガ、ブログ、note、Youtube、など
オフライン… 自社発行の月刊・季刊誌、会報誌、カタログ、パンフレット、チラシなど
一般的には、企業が運営するウェブマガジンやブログをオウンドメディアと呼び、狭義の意味で使われることが多いです。 消費者や顧客が求めている情報を把握し、有益な情報を発信し、潜在顧客や見込み顧客、ファンに対してブランドイメージを高め、コミュニケーションを図ります。制作したコンテンツが自社の資産になる点が大きなメリットとも言えるでしょう。
アーンドメディアの役割や種類
アーンドメディアのメリットは、第三者による意見や評価が伝播するため、より信頼性のある情報として消費者からの信頼を得ることができます。さらに、広告宣伝費のようなに多大なコストをかけずに、コンテンツが話題となることで、多くのユーザーに情報を届けられる点も魅力です。反面、情報に関しては自社ではコントロールしにくいといえます。
口コミ、レビュー、SNSでのいいね!やシェア、PRやパブリシティなど
ペイドメディアの役割や種類
ペイドメディアはその言葉の通り、費用を払って掲載するメディア、つまり出稿です。見込み顧客の集客や、露出増加による認知向上などの短期的な効果を求める場合は有効な手段です。しかし、広告費用がかかるため、その予算によって集客や認知できる範囲の限界が決まってしまいます。
テレビ、新聞、ラジオなどマスメディアによる広告など
それぞれのメディアはコンテンツや消費者の動きを通じて繋がり、影響を及ぼし合います。ペイドメディアには「多大な費用がかかってコミュニケーションが一方的になりがち」、アーンドメディアには「新しい情報以外では接触が難しく、情報を蓄積しにくい」といったデメリットがあります。オウンドメディアはペイドメディアとアーンドメディアのデメリットを補うことができるのです。
オウンドメディアが流行するまで
2009年に日本アドバタイザーズ協会のWeb広告研究会が「トリプルメディア」を提唱してから、2〜3年後の2011年頃からオウンドメディアの運営が日本企業でも開始されていきます。
ちょうど同じ頃に、コンテンツマーケティングも普及していきます。 2011年に行われたGoogleの調査により、消費購買プロセスにおいてFMOTの前段階にある大事な瞬間、「ゼロ個めの真実の瞬間(ZMOT:Zero Moment of Truth)」があるとわかりました。ZMOTとは、顧客は店頭に行くまでに情報を収集しているというものです。 ZMOTの発見により、コンテンツマーケティングの重要性にマーケターたちが気づき、コンテンツマーケティング自体は2011年頃に欧米で流行しました。
日本においては、2011年から2014年までのコンテンツマーケティングはどちらかというSEOに近い概念として扱われていました。オウンドメディアで言えば、2011年頃は「続きはWebで」と他のペイドメディアと連動した手法も多く見られました。
2014年頃から日本でも、コンテンツマーケティングへの捉え方も変化し、顧客と適切なコミュニケーションを継続的に行うことが大切であるという意識が広がっていきました。そして、2014年頃から、企業によるオウンドメディアの立ち上げブームが起こり、多くの企業でオウンドメディアの運営を開始しました。SNSの普及により一般の生活者も自由に評価・評論・共有できるようになった時代でもあります。
2009年|トリプルメディアという概念に、オウンドメディアが登場
2011年|ZMOTの発見、コンテンツやコンテンツマーケティングに注目
2014年|オウンドメディアブーム到来
しかし、2014年から2017年前後はまだ低価格で量産した低品質のSEO記事でオウンドメディアを運営している企業は多くいたのではないでしょうか。事業会社というより、運用会社が定量的な数字でサービスを販売していたことにも起因するかもしれませんが、「いかにシェアされるか」「いかに検索結果で上位に上がるか」という定量的な評価が重視されていました。情報の大海で勝ち抜くべく、自社オウンドメディア外にもコンテンツが流通し機能する「コンテンツマーケティング」が持てはやされました。むやみにコンテンツを量産し、自社とは関係性の薄いコンテンツが投入されることもしばしば起きる事態になり、コンテンツに対して信頼性や権利といった責任を問う声が上がり、誘導された先にあるオウンドメディアの意義も問われることになりました。
コンテンツマーケティングとオウンドメディアの違い
コンテンツマーケティングは購入プロセスに合わせて、適切なコンテンツを用意し、顧客との関係を築いていくことを目的としています。コンテンツマーケティングに使われるコンテンツは、記事、導入事例、ホワイトペーパー、eBook、メールマガジン、YouTubeなどの動画、セミナーなど、オンラインからオフラインまで多くの種類があります。 オウンドメディアは、一般的には自社で運営・管理するウェブマガジンなどWeb上のメディアを指すことが多く、広義の意味では自社のパンフレットやDMや会報誌などを含めることもあります。
オウンドメディアはコンテンツマーケティングの一部という意見もありますし、オウンドメディアはマーケティングのように売上を上げるためのものではなく広報的な位置付けだという主張もあります。
BtoB企業では、オウンドメディアに専門的な記事を掲載し、顧客からの信頼を得ることで、集客につなげるケースが多くあります。一方でBtoC企業では、マーケティングに多くの広告費用やプロモーション費用をかけています。短期的な売上につながるアクセルは、ペイドメディアへの出稿やアーンドメディアで拡散されるための企画・制作で対応しています。そのため、オウンドメディアをマーケティングやコンテンツマーケティングの一部という立ち位置で展開するケースは珍しいように感じます。
オウンドメディアの課題
オウンドメディアは、大手企業など取り入れ始め、会社の規模を問わずにさまざまな企業で採用されています。しかし、立ち上げから数ヶ月後には更新が滞ってしまうケースも珍しくないでしょう。オウンドメディアに多く挙げられる課題を紹介します。
KPIの立て方が難しい
PV、コンバージョンが増えない
方向性が定まらない
社内で理解を得ることが難しい
記事が更新できない
記事がつまらない
既存メディアとの連携ができない
メディア横断した活用が難しい
BtoB企業とBtoC企業では、オウンドメディアを活用する背景が異なることが多いです。BtoB企業ではコンバージョンのために行うことが多く、BtoC企業では広報的な要素の方が強いことが多いように感じます。
どのようなシチュエーションでも、適切な目的と中長期的なビジョンを持って、運営していくことが重要でしょう。オウンドメディアを運営していくには、継続性が求められ、運営側の想いや、リソースの確保が必要になってきます。そして、応援してくる人や共感してくる人を増やしていけるような、運営していくための体制を作ることも重要になります。
「オウンドメディアはオワコンか?令和のオウンドメディア戦略」で令和時代におけるオウンドメディアの課題とその解決策を記載しています。ぜひご覧ください。