クリエイティブに活用されているAIは何ができるのか? PhotoshopのAI(Adobe Sensei) 機能

クリエイティブに活用されているAIは何ができるのか? PhotoshopのAI(Adobe Sensei) 機能

ハリウッドでは、生成AIによってアクターやエキストラが置き換えられてしまうのではないかという声が上がっています。映画で過去10年間は配信プラットフォームが大きく変わり、次の10年はコンテンツ制作が大きく変わるのではないかと言われていました。そんなことが言われ始めた頃は「突飛なことを言う人がいる」と受け止められていましたが、今やハリウッドのストライキにより現実味が帯びています。

デジタル技術は、業務効率化や人手不足解消という文脈とセットで人間にとってプラスなものであると伝えられてきました。マイナス側面はあまり語られてきていませんでした。

AI技術が搭載されているソリューションは定型作業を中心に人口減少や生産性向上のために活用されてきました。

さらに、急速に技術が進歩し、定型業務だけでなく、クリエイティブな作業にもAIは活用されるようになりました。AIにクリエイティブな仕事さえ奪われて人間は何をすべきなのか――それも今の時代の一つの生きづらさにつながるかもしれません。人々にとって、ハリウッドのストライキをきっかけにマスメディアでも取り上げられ、とにかくクリエイティブに活用されているAIが不気味というのが現状ではないでしょうか。

一方で、メリットもあり、確かにAI はより効率的にコンテンツを編集したり制作したりすることを可能にします。今回の記事では、Adobe Photoshopに搭載されているAI機能を中心に、どんな用途にAI活用ができるのか確認していきましょう。

PhotoshopのAI機能、勝手にTOP10

1.Sky replacement(空を置き換え…)

AdobeMAX2020でリリースが発表された「Sky replacement」。(AdobeMAX2020はオンラインで視聴していましたが、この時に多くのAI機能が発表されました。)2021 年 8 月に更新(v22.5)されました。

PhotoshopのAI「Sky replacement」

左側がもともとの写真です。右側が「Sky replacement(空を置き換え…)」機能を使って作成したものです。

撮影した日はとっても暑い日でしたが、残念ながら曇り。さらに排気ガスの影響なのかモヤがかったような景色です。「Sky replacement」によって青空に雲があり引き締まった写真になったように感じます。

動画解説:画像の空を簡単に置き換える

2.サブジェクトの選択(被写体の選択)

被写体の選択は、AI機能を活用するクリエイターがお気に入りのツールではないでしょうか。[被写体の選択]をクリックするだけで、AIが画像を分析して被写体を判断し、選択を行います。ポートレート撮影では素晴らしい効果を発揮します。

左側の画像はもともとの写真です、少し白っぽい印象を与えます。白みを取り除いて、もう少し被写体にクッキリしたイキイキしさを与えたい場合に、[被写体の選択]を使うと簡単に被写体のみにエフェクトを入れることができます。今回はコントラストを調整しました。

 PhotoshopのAI「サブジェクトの選択(被写体の選択)」

被写体の選択を行い、マスクレイヤーを作りました。マスクレイヤーのみにエフェクトを効かせています。

コントラストの調整

動画解説:簡単に被写体を選択

3.Object Selection(オブジェクト選択ツール)

少し帽子のバケツが他と比べてパステルカラーで浮いています。他の色味と合わせるためにはバケツだけをサクッと選択できると非常に助かります。

そんなときに素晴らしい機能は、オブジェクト選択ツールです。

PhotoshopのAI「Object Selection(オブジェクト選択ツール)」

被写体の選択と同様に、Photoshop が内容を分析してボックス内のオブジェクトを選択します。写真に複数の被写体が含まれている場合、または主要な被写体以外のオブジェクトを選択したい場合に便利です。

被写体以外のオブジェクトを選択したい場合

動画解説:簡単に被写体以外のオブジェクトを選択する

4.Select Sky(空を選択)

自動選択ツールは、AI を使用して屋外の写真の空を認識し、空のエリアを選択します。空は明るくなる傾向があるため、空と下の土地のバランスを取りたい時に便利なツールです。

PhotoshopのAI「Select Sky(空を選択)」

動画解説:空を選択する

5.Neural Filters

AdobeMAX2020で発表され話題を呼んだ「ニューラルフィルター」。Photoshop2021に搭載された新機能です。

ゴッホ風や北斎風に変換できたり、笑ってない顔を笑顔にできたりを驚きでした。

PhotoshopのAI「Neural Filters」

Adobe Sensei の技術を活用した機械学習を使用して、わずか数クリックで難しいワークフローを大幅に削減できるフィルターのライブラリを備えています。

動画解説:若返らせて笑顔を生成する

6.Content Aware Fill(コンテンツに応じた塗りつぶし)

プレビュー機能を搭載した「コンテンツに応じた塗りつぶし」は、Photoshop 2019以降に対応した機能です。AI を使用して塗りつぶしたい領域の周囲の画像コンテンツを分析し、風景を一致させて再構築することによって行われます。

PhotoshopのAI「Content Aware Fill(コンテンツに応じた塗りつぶし)」

一発で処理は綺麗に行かないことがほとんどですが、サンプリングブラシツール、選択範囲の調整ツール、塗りつぶしの設定で調整して馴染ませることができます。

動画解説:簡単に人を削除して、背景を馴染ませる

7.Face Aware Liquify(ゆがみ)

ゆがみツールの顔認識機能で、顔を自動的に認識し、顔立ちを変えることができます。微妙な笑顔を追加したり、目を大きくしたり、顔の形を微調整したりできます。

どこか不自然にはなるかもしれません。これは実際に使うと本当の顔を加工してしまうことになってしまうので、どんなところで活用するかは難しいところ。

片方の目を大きくしてみました。

PhotoshopのAI「Face Aware Liquify(ゆがみ)」

8.Enhance Details

撮影した後の後処理はとても重要なプロセス。RAW形式で撮影すると、イメージセンサーで得た情報をほぼそのまま記録したファイルが記録されます。(RAWファイルは「画像ファイル」ではないのでパソコンで使うことはできません。)パソコンを使って画像ファイルに変換する必要があります。

主にISO感度をあげたときにノイズが出るのですが、ノイズリダクション(カメラの高感度ノイズ低減機能)を使うことで、ノイズ量は軽減されます。しかし、ディテールが失われシャープ感がなくなる場合があり、ノイズリダクションをオフにして撮影をすることもあります。

撮影後に、Camera Raw または Lightroom で RAW 画像を右クリックし、「詳細を強化」を選択するだけです。画像を分析し、詳細を追加します。細部を鮮明にし、色のレンダリングを改善し、アーティファクトを軽減する可能性があります。高ISO画像ではより効果的です。(ISO感度を上げれば、光が少ない場所でもシャッター速度を速くすることができます。暗い場所での手ブレや、スポーツ写真の被写体ブレを軽減することができます。一方で、写真のノイズが増えたり、仕上がりの写真のシャープさが失われたりする傾向があります。)

<ユースケースは近い将来にきっと来週に追加します>

<ISO感度とシャッタースピードと絞りの関係はは別の記事で詳細に記載します>

9.Auto Tone

Lightroom と Camera Raw の自動トーン機能は、AI を使用してトーンを自動的に修正するようになりました。そのため、画像コンテンツを分析し、さまざまなオブジェクトがどのように見えるかを判断しより微妙なレベルの色調を適用して領域を強調することができます。

<ユースケースは近い将来にきっと来週に追加します>

10. Firefly Generative AI

米Adobeは2023年3月21日、画像生成機能およびテキストエフェクトを中心とした、独自の画像生成AI 「Adobe Firefly」 を発表しました。

さらに2023年5月23日に、 「Adobe Firefly」 に画像の拡張、オブジェクトの追加、削除を簡単なテキストプロンプトを使って操作可能なGenerative Fill(ジェネレーティブ塗りつぶし)機能を追加しました。

Generative Fill を使用すると、ユーザーは Firefly 生成 AI を使用して、複雑な写真調整をほぼ瞬時に実行できます。Generative Fill は、既存のパターンまたは選択範囲に基づいて画像コンテンツを自動的に生成するPhotoshop AIの最先端テクノロジーです 。

< Firefly Generative AIは別の記事で詳細に記載します>

実務レベルでは便利なAIによってクリエイティブはコストカットされるのか

PhotoshopのAIを見ると、どれも実用的で、可能性を広げてくれるような気もしませんか。現場目線での使い方に焦点を当てて考えると、とても便利。AIの活用もクリエイティブな業務への知見や技術がないと、難しいことも少し垣間見れたのではないでしょうか。

AIを使うためにキャッチアップしていないと、活用するアイディアも出てこないです。クリエイティブに従事するクリエイターやディレクターなどがAIを理解することで、業務に活用し、効率的に制作することを可能にします。

しかし、ビジネスサイドでAIを活用しようとする時は、コスト削減、人件費の削減、モラルの低下などを加速させてしまう可能性は少なからずはやはりあるでしょう。

そのため、ビジネスサイドの人たちの倫理観次第では悪用され、人間の存在自体を問われ、何か被害がもたらされるのではないかと漠然とした不安を抱いたり、もしくは現実的な損失が浮き彫りになったりしているのではないでしょうか。

特にまったくクリエイティブに関心がないビジネスサイドの人間がどのような使い方や評価するのかは誰も想像できません。便利にするための情報科学やデジタル技術が単なる労働者の削減やコスト削減になってしまうのか。ある一部の人間だけがAIの恩恵を巨額の冨として得ることになるのか。これからの私たちのAIへの理解、適切な適用のアイディア、倫理観に委ねられているのかもしれません。

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