Adobeの生成 AI システム「Firefly」とは何ですか?

Adobeの生成 AI システム「Firefly」とは何ですか?

2023年3月に、Adobeは画像とテキスト効果の生成に重点を置いたクリエイティブな生成 AI モデルの新しいファミリーである Adobe Firefly を発表しました。AI アート ジェネレーターとしては、Firefly は新規参入であり、Jasper、Midjourney、Photosonicなどがリードしていました。

この記事では、生成AIとは何か、Adobe生成 AI システム「Firefly」でできることは何かを紹介します。

生成AIとは

生成AIとは、過去の膨大な素材を学習させることによってAIモデルを作成します。

画像生成、テキスト生成、動画生成、音声生成などいくつか種類があります。

例えば、テキスト生成モデル(text-to-textモデル)であるChat GPTは、インターネット上の膨大のテキストによりトレーニングされました。ユーザーがテキストボックスに質問を入力すると、AIが質問内容を解析して、回答となるテキストを生成します。

画像生成モデル(text-to-imageモデル)であるStable Diffusionは、教師データを確保するためにインターネット上から何十億もの画像をスクレイピングし、訓練されました。主にユーザーがテキストを入力すると、その内容に応じてAIがオリジナル画像生成を行います。

生成AIに関する倫理的・法的・社会的課題(エルシー:Ethical, Legal and Social Issues)

ChatGPTはオプトアウトを申請しない限り、ユーザーの入力内容がOpenAIによって利用されることが規約で明記されており、OpenAIは機密情報を入力しないようにユーザーに警告しています。韓国のサムスン電子では、設備情報の流出が2件、会議内容の流出が1件が発生し、従業員の利用は禁止されました。

ChatGPTによる個人情報の収集に関しては、EU一般データ保護規則に違反している疑いがあるとして、2023年3月31日、イタリア政府はchatGPTへのアクセスを一時禁止していました。

Stable Diffusionは、教師データとして活用した画像の大半は同意を得ているわけではないので、著作権法に違反するのかどうか、倫理的に適切であるのかといった法的・倫理的な論争が生じており、提供元のStability AIに対して複数の訴訟が提起されています。

生成AIは、法的・倫理的な問題と、その利活用が与える影響を慎重に検討する必要はあるでしょう。もちろん現場レベルの業務で効率的であるが、ビジネスサイドでは慎重に考える必要があると考えられます。ビジネスサイドがコストカットやリソース削減のために活用すること、セキュリティ面への規制も、現場レベルと違って影響が大きいです。そのため、中長期的に検討する必要があると言えます。

給料の良いポジションが少なる?

マサチューセッツ工科大学教授のダロン・アシモグルとサイモン・ジョンソンは、AIは労働需要の縮小と賃金の減少を招き、経済全体を縮小させる可能性を指摘しています。アルゴリズムの予測力は、人々を置き換えるのではなく、人々を助けるために利用することができるが、残念ながら、人間がすでにうまくやっていることをできるソフトウェアの開発に多額の費用を費やし続けていると。[※1]

コミュニケーションスキルを必要とする仕事が少なくなり、給料の良いポジションが少なくなります。清掃員、運転手、その他の肉体労働者は仕事を続けるでしょう。エントリーレベルの仕事が少なくなるでしょうと警告しています。[※1]

there will be fewer jobs requiring strong communication skills, and thus fewer positions that pay well. Cleaners, drivers, and some other manual workers will keep their jobs, but everyone else should be afraid.

Fewer entry-level jobs will mean fewer opportunities to start a career – continuing a trend established by earlier digital technologies.

引用:What’s Wrong with ChatGPT?

生成AIでは、人間がこれまで作成してきた過去のデータを活用している点も注目すべきです。そのため、誤った情報やバイアスがかかることもある点は留意すべきです。さらに、教師データに使われてないデータも多く、その点で偏ったものが生成される可能性もあるでしょう。

生成AIの誤報、労働への影響、安全性という面ではリスクとは

プリンストン大学(米国ニュージャージー州)の機械学習研究者Sayash KapoorとArvind Narayananは、誤報、労働への影響、安全性という面ではリスクがあると言われています。[※2]

Sayash KapoorとArvind Narayananが指摘するAIリスクは下記になります。

  1. 誤報=過剰な依存と自動化のバイアス

  2. 労働への影響=中央集権化した権力、労働の搾取

  3. 安全性=直近のセキュリティリスク

テクノロジーの裏側では時給2ドルの労働

また、ChatGPTをリリースした企業のOpenAIが、時給2ドルでケニアの人たちを雇い、ChatGPTの性能を上げるための有害コンテンツのラベリングをさせていたとのこと。 [※3]

こういった倫理的、法的、社会的問題を抱えていることを理解しながらも、話題になっている生成AIであるAdobe 「Firefly」を試してみます。

Adobe生成 AI システム「Firefly」とは

2023年3月に発表された「Firefly」は、Adobeが作成した生成 AI システムで、AdobeのCreative Cloud アプリケーションと統合するように設計されています。

Adobe Stock 画像、オープンにライセンスされたコンテンツ、著作権制限のないコンテンツでトレーニングされたと主張しています[※4]。ジェネレーティブ フィル機能を使用して作成されたものはすべて商用利用しても安全であることを意味します。

Firefly を使用するには 2 つの方法があります。Firefly Web サイトのブラウザで使用する方法と、Photoshop の最新ベータ版で使用する方法です。

Fireflyを使用する方法

  • Firefly Web サイトのブラウザで使用する

  • Photoshop の最新ベータ版で使用する

Firefly Web サイトでは 4 つのツールが利用可能です。

  • Text to image:プロンプトから画像を生成します。

  • Generative Fill:テキストを使用してオブジェクト (背景を含む) を削除するか、新しいオブジェクトをペイント (修復) します。

  • Text effects:プロンプトを使用してテキストにスタイルとテクスチャを適用します。

  • Generative Recolor:テキスト プロンプトからベクター アートのカラー バリエーションを作成します。

Text to imageとGenerative Fillをそれでは実際に使ってみます。

Text to imageを試用

「冒険家の猫」をイメージしてみましょう。みなさんは頭の中でどのような猫をイメージするでしょうか。

Firefly Web サイトで、実際に「冒険家の猫」を入力すると下記のようなイラストが作成されました。

Text to image

写真を選ぶとこのような感じになりました。

Text to imageを試用

データセットに影響を受けやすく、潜在的なバイアスがあることは指摘されていますがどうでしょうか。日本ぽいでしょうか、欧米ぽいでしょうか。ステレオタイプぽいでしょうか、オリジナルぽいでしょうか。データセットのテイストが垣間見れます。

イメージした冒険する猫とは違いましたか。大きく異なる場合は、どうしますか。

Generative Fillを試用

Firefly Web サイトで、サンプルを選びます。部分的に削除すると、オプジェクトを追加できます。ここでは削除した場所に鳥を配置してみました。

次に背景をクリックすることで背景を変更しました。背景は、砂漠と入力し、生成された背景を選択しました。背景を砂漠にした途端に配置した「鳥」がひどいことになってしまいました。イラストの鳥にごめんなさいという気持ちになりしました。

Generative Fill

動画解説:Generative Fill(Web版)

デスクトップアプリのGenerative Fillを試用

家で飼っていそうなかわいい猫ですが、背景が変わればどうでしょうか。

デスクトップアプリのGenerative Fillを試用

動画解説:Generative Fill(デスクトップアプリ Beta版)

2023年5月23日に、画像生成AI「Adobe Firefly」を、画像編集ソフト「Photoshop」に実装すると発表。同日にAdobe FireflyのGenerative Fill(ジェネレーティブ塗りつぶしβ版)機能を実装したβ版を同日より公開しました。

生成AIの活用とその未来

Adobeが3月に実施した調査では、過去1年間でコンテンツ需要が2倍以上になったと回答した企業は約9割にのぼる。企業の約7割が今後2年間でコンテンツ需要が5倍になると予想しています[※4]。

一つの懸念として、AIによってコンテンツが簡単に量産され続けてしまうと、本当に届けたい情報をユーザーに届けるには、今よりも厳しいものになっていくかもしれません。

どうやってリアルの場と連動させるか、どのようにプロモーションを仕掛けるのか。試される時代になるのか、とにかくAIに依存して量産して、AIが気に入るように人間は活動すべきなのか。

クリエイター目線では、今まで時間をかけて作り上げてきたものが、知らないうちにデータとして活用されることは著作権上問題です。

また、今まで手を動かして、失敗する時間もたくさんいただいて、小さい仕事から育ててもらったと思った経験がある人たちは、きっとAIにより若手の経験を阻害するようなことを危惧するのではないかと思います。人間が手を動かすことでアイディアも、適用方法も広がります。

また、フリーランスを活用している場合、フリーランサーが勝手に生成AIを活用される可能性も危惧することはあり得るでしょう。企業側は調べる術も現時点ではないので、特に一次受けの制作会社や広告代理店はインボイス制度と相まって、発注に二の足を踏むことも増えていく気もします。


※1…What’s Wrong with ChatGPT?

※2…A misleading open letter about sci-fi AI dangers ignores the real risks

※3…ChatGPT成功の裏に劣悪な労働搾取。ケニアで時給2ドル

※4…Adobe Unveils Firefly, a Family of new Creative Generative AI

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