インタラクティブ動画の特性と活用
動画マーケティングの新たな手法としてインタラクティブ動画が注目されている。これまでの“ただ見るだけ“の動画とは異なり、視聴者が動画上でアクションが取れるのが特長である。
TVCMに始まり、YouTube、TikTokなど、映像で何かを訴求するということは、これまでも行われてきたが、改めて、昨今の動画マーケティングの需要の変化とインタラクティブ動画の活用について紹介する。
動画マーケティングの需要の変化
2019年から2021年までの過去2年間は、新型コロナ感染症の影響でマーケティング手法にも変化が見られた。特に、物理的な移動が必須だったオフラインでのイベントが、どこでも手軽に参加できるウェビナーへ切り替わっていったことは、大きな変化と言える。インプレス総合研究所『動画配信ビジネス調査報告書2020』(※1)によるとスマートフォン利用者を対象に、新型コロナウイルス感染症拡大のため外出自粛により在宅時間が増えたことで、どのような活動が増加したかを聞いたところ、「無料の動画を見る」が27.5%でトップであった。
視聴者が求めている動画コンテンツという観点では、娯楽、趣味に関するコンテンツだけに留まらず、商品やサービス、好意にしているブランドのコンテンツなど様々ニーズがあると言える。(HubSpot、2018年)。
一方、ビジネスの観点では、マーケティング専門家の86%がビデオを強力なマーケティングツールだと認識し、78%がビデオが売り上げの増加に直接役立ったと言っていることからも、動画コンテンツはビジネスの成長に貢献する可能性が高いと言えるだろう。また、ビデオによって、自社Webサイトのトラフィックが増加したという事実を鑑みても、ビデオコンテンツが、視聴者(ファン)とビジネスを結びつける架け橋となっているということもできる。(Wyzowl、2021年)。
このことからもオンラインでの動画コンテンツの活用は、マーケティングの重要なfunctionと言えるだろう。また、デジタル化する世界では、動画は視覚に訴えるストーリーテリング(ビジネスによってその人をどう変えるか、社会をどう変えるかを鮮明にイメージさせること)の標準的な手法になりつつある。動画はブランドのファンとコミュニケーションするための効果的なメディアであることを考えると、当然のことだろう。
動画コンテンツの効果と期待、活用エリア
マーケターが感じる効果(Wyzowl,2020年 ※2)
マーケターの83%は、マーケティングキャンペーンで動画を使用することで、リードを生み出すことができたと回答した。
80%は動画が売上に役立ったと述べ、95%のマーケターはユーザーが動画によって自社の製品やサービスをよりよく理解できると回答した。
消費者の期待(Wyzowl,2020年 ※2)
製品やサービスについてどのように知りたいかを尋ねられたとき、73%が短いビデオを見たいと回答した。
96%の人が、製品やサービスについて詳しく知るために解説動画を見たことがあり、78%の人が、ビデオを見てソフトウェアやアプリを購入、またはダウンロードすることを決めると回答した。
ビデオホスティングプラットフォームWistiaの2022年のStateof Videoレポートによると、55%のブランドが動画制作の予算を5%以上増やすことを計画しており、まったく新しいタイプのビデオを制作することを考えていることが分かる。また、制作予定の動画の種類は、ブランドメッセージ、製品紹介ビデオ、製品デモ、およびケーススタディなど様々な業務領域において動画の制作が予定されている。
動画マーケティングに求められるクオリティ
多くの企業で、高価で高品質の動画キャンペーンが必要であると信じられているが、利用期間や用途によって、どの程度の費用が妥当なのか、費用対効果の側面から検討すべきだろう。動画に関しては、時間をかければ細部までこだわるので、クオリティを高めることができるが、コストとのバランスを忘れてはいけない。 “低価格でクオリティの高い動画“といった二律背反を求めることは難しい。一方で、重要なポイントの認識にズレがあることは、お互いに不幸な話である。コスト、クオリティー、スピードをコントロールしながらアジャイルで回すことがマーケターに今後求められることだろう。
動画マーケティングのポイント
最初の10秒間でユーザーを惹きつける
ブランド認知の動画は、15〜60秒に保つ
新しいリードの生成や製品とサービスの購入を目的としたプロモーションビデオの長さは30秒から5分。
プロモーションビデオには製品の購入方法、製品情報と製品ページのオンライン共有方法、およびダウンロード可能な製品情報の提供方法を強調する必要がある
キャンペーンのパフォーマンスを正確に測定するためのさまざまな測定を実装する必要がある(インプレッション、ビュー、頻度、リーチ、ユニークリーチなどの標準的な測定)
マーケターは、ビデオキャンペーンの実際のパフォーマンスを特定するために、分析をもう少し深く掘り下げる必要がある
コンバージョン後にサンキューとアップセルの動画を送信することを忘れてはならない
コストとクオリティのバランス、重要なポイントの認識
インタラクティブ動画の制作工程
新しい動画コンテンツの種類として、インタラクティブ動画が昨今注目されている。インタラクティブ動画を制作する場合は、あらかじめユーザーのアクションを優先して構成を組む必要がある。 インタラクティブ アクションの実装は、動画制作の作業が終わってからではあるが、アクションを想定し構成された動画か、そうでないかによって、実装の難易度が変わってくる。
アクションを実装した後に、サイトに埋め込んだり、広告出稿やメールマーケティングで活用したりするフェーズに移る。チャネルや利用方法も複数考えられるようになった現在、生産プロセスを合理化する必要がある。KPIの指標に関しても、連続されたマーケティング活動の中での測り方を検討すべきだろう。
制作工程
構成を考える
ナレーションやテロップを考える
撮影する
素材を作成する
編集する(併行してBGMやSEを選ぶ)
確認する
修正する
インタラクティブを実装する
確認する
修正する
複数のチャネルでのマーケティング活動での利用
一般的な動画コンテンツよりも一手間は加わるが、企画段階でコンセプトを固め、使い方までを想定しておくことで、全体の工数を最適化することができる。インタラクティブ動画はユーザーのアクションに合わせて分岐を作っていくので、思いつきでできるようなものではないが、今まですでにコンテンツを多く持っている企業は取り組みやすい可能性もあるだろう。
インタラクティブ動画の特性と活用
HihahoやWIREWAXなどさまざまなインタラクティブなツールがでてきている。ソーシャルシェアができるかなどツールによってもメリットは分かれる。日本でもインタラクティブなツールが登場していて、ソーシャルシェアが優れている、値段が安価であるなどベンダーによって大きく違う。海外で成功事例となっているインタラクティブ動画のメリットを挙げるとすると、企画時点での目的が明確になっていることである。
IKEA Bedroom Habits
引用:showcase
目的
視聴者とコンテンツの間で費やされるより長い品質
アクション主導のデザイン
最適化されたエンドユーザーエクスペリエンス
視聴者が何度も戻ってくるほど楽しいコンテンツ
Nike on Hypebae
引用:showcase
目的
主要なオーディエンスに関連性の高いエクスペリエンスを提供する
ビデオ映像のゲーミフィケーション
シームレスに購入
インタラクティブ動画の目的は、多くのマーケターが追いかけている従来のKPIではなく、ユーザー目線での目的となっている。数字的なKPIに関しては、インタラクティブ動画の特性を生かすと良いと考える。動画上でのアクションをカウントすることができるので、どのアクションが利用されたか、アクション後の遷移はスムーズだったかなど、様々なマーケティング手法をトライし、アジャイルに試行錯誤するのがよいと考える。
“ユーザー目線の目的“は、日本のインタラクティブ動画では、なかなか達成されていないことがある。視覚と音で表現する動画を活用しているのに、説明が長かったり、長いテキストを読ませる箇所があったりと、動画の良さを活かせていないことが多く見受けられる。 テキストはあくまで字幕のようなフォロー程度に考えるとよいでしょう。視覚と音で表現する動画では、文字を盛り込みたい気持ちをグッと抑えて、コンセプトに従って無駄を削ぎ落とす作業が大事である。
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